映画『ワンダー 君は太陽』心があたたまる感動作とその魅力を徹底レビュー

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目次

『ワンダー 君は太陽』とは?|どんな映画?

ワンダー 君は太陽』は、生まれつき顔に障がいを持つ少年オギーが、初めて学校へ通いはじめる姿を描いた、家族愛と成長の物語です。

本作は、いじめや偏見に立ち向かいながら、少しずつ周囲と心を通わせていくオギーとその家族の姿を、あたたかな視点で丁寧に描いています。ジャンルとしてはヒューマンドラマに分類され、優しさや勇気がテーマになっているのが大きな特徴です。

どんな人にも存在意義があり、見た目ではなく中身で人とつながることの大切さを教えてくれる、心に残る感動作です。

一言で言えば、「“世界は君の存在で明るくなる”と教えてくれる、やさしい太陽のような映画」です。

基本情報|制作・キャスト/受賞歴・公開情報

タイトル(原題)Wonder
タイトル(邦題)ワンダー 君は太陽
公開年2017年
アメリカ
監 督スティーヴン・チョボスキー
脚 本スティーヴン・チョボスキー、ジャック・ソーン、スティーヴ・コンラッド
出 演ジュリア・ロバーツ、オーウェン・ウィルソン、ジェイコブ・トレンブレイ
制作会社Lionsgate、Participant Media、Mandeville Films
受賞歴アカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞ノミネート、その他複数の映画賞にノミネート・受賞

あらすじ(ネタバレなし)

オギー・プルマンは、生まれつき顔に変形のある10歳の男の子。長い間、自宅学習を続けてきた彼が、ついに5年生から学校に通うことを決意します。

初めての集団生活、不安だらけの新しい環境。果たしてオギーは、クラスメートたちと打ち解けることができるのでしょうか?

母のイザベル、父のネート、姉のヴィアといった家族もまた、それぞれの想いを抱えながらオギーを見守ります。

勇気を出して一歩を踏み出す少年と、それを支える人々の優しさ。 この物語は、そんな小さな一歩の積み重ねが、やがて誰かの心を動かしていく過程を描いていきます。

「見た目」ではなく「中身」で人とつながるということ――あなたなら、どう向き合いますか?

予告編で感じる世界観

※以下はYouTubeによる予告編です。

独自評価・分析

ストーリー

(4.0点)

映像/音楽

(3.5点)

キャラクター/演技

(4.5点)

メッセージ性

(4.5点)

構成/テンポ

(3.5点)

総合評価

(4.0点)

評価理由・背景

ストーリーは王道ながらも、細やかな人間描写と感情の流れが秀逸で4.0点。映像や音楽は全体的に抑えめで、特筆すべき派手さはないものの安定感があり3.5点と評価しました。キャスト陣の演技力、特に主人公オギーを演じたジェイコブ・トレンブレイの繊細な表現が印象的で4.5点。作品全体から伝わる「優しさは連鎖する」というメッセージ性の強さも4.5点をつけるに値します。構成はややシンプルで、後半の展開にやや予定調和感があるため3.5点とし、厳しめに平均すると4.0点という結果になりました。

3つの魅力ポイント

1 – 主人公オギーの成長に共感

オギーの抱える葛藤や不安は、見た目の問題にとどまらず「人とのつながり」への恐れをも表しています。そんな彼が少しずつ心を開き、成長していく姿は、多くの人の共感を呼ぶ力を持っています。

2 – 家族全員が主人公のような物語構成

母親や姉など、オギーを取り巻く家族たちの視点でも物語が語られる構成が秀逸です。それぞれが自分の人生や悩みを抱えており、「誰もが主役」という優しい視点が、この映画の深みを生んでいます。

3 – “優しさ”を連鎖させるテーマ性

本作の根幹にあるテーマは「Choose Kind(やさしさを選ぼう)」。一人の勇気や思いやりが、次第にまわりへと広がっていく描写には、希望とあたたかさが詰まっています。観たあと心が洗われるような余韻が残ります。

主な登場人物と演者の魅力

オギー・プルマン(ジェイコブ・トレンブレイ)

本作の主人公で、生まれつき顔に障がいを持つ少年。繊細な表情と内面の揺れを見事に表現したジェイコブ・トレンブレイの演技は、子役とは思えないほどの深みがあり、多くの観客の心をつかみました。

イザベル・プルマン(ジュリア・ロバーツ)

オギーの母親で、家庭を支えながら彼の背中を押し続ける存在。ジュリア・ロバーツの演技は、抑えた表情とまなざしだけで母親の愛情や葛藤を感じさせ、名女優としての存在感を改めて示しました。

ネート・プルマン(オーウェン・ウィルソン)

オギーの父親。おどけた雰囲気と穏やかな優しさで、家族を和ませるムードメーカー。オーウェン・ウィルソンの軽妙な演技が、物語にバランスのよい温かみを加えています。

ヴィア・プルマン(イザベラ・ヴィドヴィッチ)

オギーの姉で、弟中心の家庭の中で寂しさや葛藤を抱えている高校生。イザベラ・ヴィドヴィッチは、その繊細な心情をナチュラルな演技で表現し、観客に強い共感を与えました。

視聴者の声・印象

泣けるだけじゃなく、あたたかい気持ちになれた映画でした。
もう少し意外性のある展開があってもよかったかも。
子どもと一緒に観るのにぴったりの内容。優しさの大切さを学べる。
良い話だけど、少し理想的すぎる気もした。
演技が素晴らしくて、家族それぞれの視点に胸を打たれました。

こんな人におすすめ

心温まるヒューマンドラマを観たい気分のときに。

「家族の絆」や「成長」をテーマにした作品が好きな人に。

『ワンダー 君は太陽』のような“優しさが連鎖する物語”に共感できる人に。

グリーンブック』や『パッチ・アダムス』など、実話に基づいた心動かす映画が好きな人に。

子どもと一緒に観る映画を探している保護者の方にもおすすめ。

逆に避けたほうがよい人の特徴

重厚な展開やサスペンス性を求める人には物足りなく感じるかもしれません。
感動作にありがちな「予定調和」や「綺麗ごと」に抵抗を感じる人には向いていないかもしれません。
映画に強い刺激や衝撃展開を期待する方には不向きです。

社会的なテーマや背景との関係

『ワンダー 君は太陽』が描いているのは、単なる「家族の絆」や「成長」だけではありません。本作の根底にあるのは、外見に対する偏見や差別とどう向き合うかという現代社会の重要な課題です。

主人公オギーは、先天的な顔の障がいによって、他者からの視線やいじめにさらされます。これは、現実の学校や社会における“見た目”に関する偏見の縮図とも言える状況です。

また本作では、障がいを持つ本人だけでなく、その周囲にいる家族や友人がそれぞれに葛藤し、支え合う様子も丁寧に描かれています。「当事者だけでなく、周囲の人々も社会の一部としてどう接するべきか」という視点は、今の多様性を尊重する時代に強く響きます。

さらに注目したいのは、「やさしさは選択である」というメッセージ。これは、SNSなどで無意識に発される言葉が誰かを傷つけることがある現代において、意識的に“思いやり”を選ぶことの大切さを提案する言葉でもあります。

本作の背景には、原作者R・J・パラシオ自身が、障がいのある子と偶然出会った体験から「自分がどう振る舞えばよかったのか」と自問したことがあり、それが物語の原点となっています。この実体験をベースにしているからこそ、物語は“作り物”ではなく、現実に根ざした説得力とリアリティをもって観客に届くのです。

社会的なテーマを持ちつつも、道徳的なお説教に終始することなく、「物語」として観る者の心に自然に染み込む形で伝えてくるのが、この作品の優れた点のひとつと言えるでしょう。

映像表現・刺激的なシーンの影響

『ワンダー 君は太陽』は、視覚的な刺激や派手な演出に頼らず、あくまでもストーリーと人物描写を中心に進行する映画です。映像表現は全体的にナチュラルで、色調も落ち着いており、日常を切り取ったようなリアリティがあります。

特に印象的なのは、オギーの視点に寄り添った演出です。彼が人目を気にする場面では、カメラもやや引き気味に配置され、「周囲から見られる」緊張感が映像からも感じられます。また、時折挿入される想像世界の映像(宇宙飛行士の登場など)は、オギーの内面世界を表す効果的な工夫であり、物語に彩りを添えています。

音楽に関しても、情緒をあおるような劇的な旋律ではなく、穏やかで温かみのある音色が多く使われています。それにより、観る者が感情を自然に重ねていけるような静かな演出が成立しています。

刺激的なシーンや過激な描写はほとんど存在せず、暴力的な場面についても、いじめや冷たい言葉が登場する程度にとどまっており、直接的な暴力描写や過度な表現は避けられています。そのため、全年齢に近い幅広い層に安心して勧められる作品です。

ただし、感受性の高い子どもにとっては、心ない言葉や孤独を感じるシーンが印象に残る可能性もあるため、親子で鑑賞する場合は、鑑賞後に対話の時間を設けるとより深い理解が得られるでしょう。

全体として、本作の映像と演出は“魅せる”ためではなく、“伝える”ために存在しており、派手さこそないものの、丁寧に組み立てられた映像世界が、オギーの物語をそっと包み込んでいます。

関連作品(前作・原作・メディア展開など)

本作『ワンダー 君は太陽』には、いくつかの関連作品やメディア展開があります。

まず注目すべきは原作小説『Wonder(ワンダー)』。アメリカの作家R・J・パラシオによって2012年に発表された児童文学作品で、世界中で800万部以上を売り上げるベストセラーとなりました。日本でも翻訳版が出版されており、映画と同様に多くの読者の心をつかんでいます。

映画は基本的に原作に忠実に作られていますが、映画版では家族の描写や演出がより丁寧に補完されており、視覚的な感情表現が強く印象に残る構成になっています。どちらが先でも楽しめる内容ですが、先に映画を観ると物語全体の流れが把握しやすく、その後に原作を読むと登場人物の心理描写の深さがより感じられるでしょう。

また、原作にはサイドストーリーを描いた続刊『Auggie & Me』が存在し、オギーの周囲の子どもたち――いじめっ子や友人の視点から描かれた補完的な短編集となっています。映画化はされていませんが、物語の“裏側”を知ることができる貴重な内容として、ファンの間でも評価が高い作品です。

さらに、映画公開にあわせて原作小説の装丁や児童書版なども再販されており、教育現場でも“思いやりを育む教材”として活用されることがあるほど、社会的な広がりを見せた作品群と言えます。

類似作品やジャンルの比較

『ワンダー 君は太陽』と同じく“見た目や立場の違いを越えて人とつながる”ことをテーマとした作品はいくつか存在します。ここではその中でも特におすすめの作品を3本紹介します。

■『そして父になる』(2013/是枝裕和監督)
血のつながりよりも「一緒に過ごす時間」こそが家族を形作る――というテーマが描かれる感動作。『ワンダー』同様に、家族それぞれの視点を丁寧に描くことで、観る人の感情を多層的に刺激します。

■『おおかみこどもの雨と雪』(2012/細田守監督)
人と違う存在として生きる子どもたちと、彼らを育てる母の物語。「違いを受け入れ、愛し合う」という主題が本作と重なり、ファンタジーながらもリアルな親子の関係が描かれています。

■『Martian Child』(2007/ジョン・カスダン監督)
宇宙人だと信じ込む少年を養子に迎えた作家の物語。周囲から“変わり者”として見られる少年と、孤独な大人が心を通わせていく展開は、『ワンダー』と共通する感情の距離感と癒しの描写があります。

いずれも、相手の個性を認め、受け入れることで関係性が深まっていくという構造を持つ作品です。『ワンダー』が好きな方には、きっと心に響く作品ばかりです。

続編情報

『ワンダー 君は太陽』の直接的な続編は現在のところ存在していませんが、スピンオフ作品という形で“続く物語”が制作されています

■ 続編の存在:あり(スピンオフ・プリクエル形式)
『ワンダー』の世界観を引き継ぐ新作映画として、『ホワイトバード はじまりのワンダー』(原題:White Bird: A Wonder Story)が制作され、2024年12月6日より日本公開が予定されています。

■ タイトル・公開時期
タイトル:『ホワイトバード はじまりのワンダー』
日本公開予定日:2024年12月6日

■ 制作体制
監督:マーク・フォースター(『チョコレート』、『ネバーランド』など)
出演:ヘレン・ミレン、アリアナ・グリーンブラット、ブライス・ゲイサー ほか

■ 作品の形態・ストーリー構成
本作は、前作で“いじめっ子”として描かれたジュリアンに焦点を当て、彼の祖母サラの過去(ナチス占領下のフランス)を描く戦時下の感動物語です。サラと彼女を匿ったユダヤ人少年との絆を通じて、“優しさ”が命を救うこともあるという、前作とは異なる視点のドラマが展開されます。

直接的な続編ではありませんが、「優しさを選ぶ」というテーマをさらに深く掘り下げた姉妹作品として位置づけられています。前作を観ていない方でも鑑賞は可能ですが、『ワンダー』の世界観やキャラクター背景を知っておくと、より一層の感動を得られるでしょう。

まとめ|本作が投げかける問いと余韻

『ワンダー 君は太陽』は、決して大きな事件や劇的な展開があるわけではありません。それでもこの映画がこれほど多くの人の心に残るのは、ごく普通の“違い”に向き合う勇気と、その先にある“やさしさ”を丹念に描いているからです。

顔に障がいを持つ少年オギーが、ただ普通に生きようとする日々。その当たり前の願いが、どれほど困難で勇気の要ることなのか。本作は「やさしさとは何か?」という問いを観る者一人ひとりに静かに突きつけてきます

「見た目で人を判断しない」「自分にできる小さな思いやりを選ぶ」「誰かの心に寄り添う」――どれも聞き慣れた言葉かもしれませんが、本作ではそれらが押しつけではなく、実感と物語を通じて伝わってくるのです。

また、家族や友人、それぞれの視点から語られる構成によって、“主役は誰か”ではなく“誰もが自分の物語を生きている”というメッセージもにじみ出ています。オギーだけでなく、姉ヴィアや母イザベルのストーリーにも共感し、涙する人も少なくないでしょう。

観終わったあと、心にそっと残るのは、「自分は今日、誰かにやさしくできただろうか?」という小さな問いかけ。そしてその問いこそが、この映画が多くの人に長く愛されている理由なのかもしれません。

「違い」を恐れず、「思いやり」を選ぶ。その選択が、世界を少しだけ明るくする力になる――そんな余韻と希望を、観た人の胸にそっと灯してくれる作品です。

ネタバレ注意!本作の考察(開くと見れます)

OPEN

『ワンダー 君は太陽』は、表面上は“心温まる感動作”として語られがちですが、実は「語られない痛み」や「沈黙の感情」が物語の裏に静かに流れています。

たとえば姉ヴィアの描写。彼女は一見しっかり者に見えますが、弟の存在によって常に自分の感情を後回しにしてきた人物です。ヴィアのエピソードは、“見えない場所で我慢している人の物語”でもあるという点で、観る側の想像力が試されるパートになっています。

また、いじめっ子ジュリアンの描写も一面的ではありません。学校から排除された彼の後日談は描かれませんが、その“描かれなさ”が、加害と被害の複雑さを象徴しているとも読めます。

終盤、オギーが卒業式で表彰されるシーンは、物語のクライマックスとなる感動の場面ですが、そこに至るまでの“積み重ねられた人間関係”こそが本作の核心と言えます。単なるハッピーエンドではなく、「時間と関係の中で築かれる信頼」が丁寧に描かれています。

さらに、オギーの内面世界として象徴的に挿入される宇宙の映像には、「自分は小さな存在だけれど、それでも確かに“ここにいる”」というメッセージが込められているようにも思えます。見た目ではなく“存在の価値”を問う、詩的な比喩として機能しているのではないでしょうか。

こうした細部を読み解いていくと、『ワンダー』は単なる感動作ではなく、社会や家庭の中にある“声にならない想い”を照らす物語として、多層的な意味を持っていることに気づかされます。

ネタバレ注意!猫たちの会話(開くと見れます)

OPEN
君、オギーがいじめられてたとき、僕もう見てられなかったよ…。胸がぎゅってなった…。
でもさ、あの卒業式のスピーチは最高だったよね。おやつ抜きでも拍手しちゃうレベルだった。
わかる…先生の言葉がすごく温かくて…オギーの頑張りが全部報われた気がして、泣いちゃった…。
それに姉ちゃんのヴィアもさ、自分のことずっと我慢してたじゃん?あの演劇のシーンで一気に来たよ。
うん…誰にも見えないところで頑張ってた人がちゃんと報われるって、本当に大事なことだと思うんだ…。
あとさ、オギーの宇宙妄想、僕もやってみたくなったよ。宇宙服で猫缶を探す冒険とかさ。
壮大なわりに夢がちっちゃいな、君…。
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