『ヴェノム:ザ・ラストダンス』とは?|どんな映画?
『ヴェノム:ザ・ラストダンス』は、マーベル原作の異形ヒーロー“ヴェノム”を主人公とした実写シリーズの第3作であり、完結編にあたるアクション・SF映画です。
人間の記者エディ・ブロックと、地球外生命体“シンビオート”であるヴェノムが共存する独特なバディ関係を軸に、ダークでユーモラスな世界観が展開されます。
本作では、エディとヴェノムが追われる身となりながらも、世界を救うために“最後の戦い”に挑む壮大なストーリーが描かれます。シリーズを通して育まれた奇妙で深い絆が試されるドラマでもあり、アクションの迫力と感情の重厚さが同居する仕上がりです。
一言で表すなら、“人類と共存する異形の存在が、最も人間らしい選択を迫られるクライマックス”。
基本情報|制作・キャスト/受賞歴・公開情報
タイトル(原題) | Venom: The Last Dance |
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タイトル(邦題) | ヴェノム:ザ・ラストダンス |
公開年 | 2024年 |
国 | アメリカ |
監 督 | ケリー・マーセル |
脚 本 | ケリー・マーセル |
出 演 | トム・ハーディ、ジュノー・テンプル、チャウェテル・イジョフォー、クラーク・バッコ、ステファン・グレアム |
制作会社 | コロンビア ピクチャーズ、マーベル・エンターテインメント、アラッド・プロダクションズ |
受賞歴 | ー(2024年7月時点で主要映画賞の受賞は未確認) |
あらすじ(ネタバレなし)
地球外生命体“ヴェノム”と共生するジャーナリスト、エディ・ブロック。これまでの戦いを経て奇妙な絆で結ばれたふたりは、ある出来事をきっかけに再び世界から追われる存在となってしまう。
身を潜めながら逃亡生活を続けるエディとヴェノムだったが、そんな彼らの前に、かつてない脅威が立ちはだかる。この“最後の敵”の出現が、彼らの運命に何をもたらすのか――
全人類の運命を左右する決断を迫られるなか、エディとヴェノムは「共に生きる」という選択にどう向き合うのか。彼らがたどり着く“答え”とは…?
予告編で感じる世界観
※以下はYouTubeによる予告編です。
独自評価・分析
ストーリー
(3.0点)
映像/音楽
(4.0点)
キャラクター/演技
(3.5点)
メッセージ性
(2.5点)
構成/テンポ
(3.0点)
総合評価
(3.2点)
完結編としての物語はテンポよく展開される一方で、ストーリーにはやや既視感があり、深みという点では弱さも感じられました。ただし、ビジュアル面ではシリーズ随一の迫力と完成度を誇り、映像・音楽の評価は高めです。エディとヴェノムのバディ感は健在ですが、演技面では新キャラの描写が浅く、感情移入しづらい印象も。メッセージ性に関しては「共生」「選択」というテーマはあれど、あくまで娯楽寄りで深掘りはされません。全体としては、シリーズファンには満足感を与える一方で、映画単体としての評価はやや厳しめに見る必要があると感じました。
3つの魅力ポイント
- 1 – シリーズ随一のスケール感
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本作では過去2作と比較してもアクションシーンのスケールが大幅に拡大し、空中戦・集団戦・爆破描写などが盛り込まれています。映画館の大画面でこそ味わいたい映像設計で、観客を圧倒する迫力が魅力です。
- 2 – ヴェノムとエディの“最終形”バディ関係
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長い時間を共にしてきたふたりの関係性が、今作でついに成熟を迎えます。喧嘩しながらも支え合う独特の掛け合いは健在で、笑いと切なさが交錯する“相棒もの”としての完成度は一見の価値ありです。
- 3 – 敵の正体と背景に潜むサプライズ
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物語のカギを握る“最後の敵”は、シリーズの設定や過去作の伏線を絡めた意外性のある存在。予備知識のある観客ほど驚かされる仕掛けがあり、単なるバトル以上に深みをもたらしています。
主な登場人物と演者の魅力
- エディ・ブロック/ヴェノム(トム・ハーディ)
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シリーズを通して主人公を務める記者エディ・ブロックと、彼の体内に寄生する地球外生命体ヴェノムの両方を演じるのがトム・ハーディ。独特の言い回しや抑揚を使い分け、ひとり二役を巧みに演じ分ける彼の演技は、今作でも際立っています。最終章となる本作では、エディの人間的な葛藤とヴェノムの野生的な本能のバランスがより深化し、バディとしての完成度が光ります。
- ドクター・ペイトン(ジュノー・テンプル)
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謎めいた研究者として登場するペイトンを演じるのはジュノー・テンプル。独特の雰囲気と知的な佇まいが、キャラクターに深みを与えています。限られた登場時間の中でも、彼女の存在感はしっかりと物語に影響を与えており、今後のシリーズ展開を感じさせるキーパーソン的な立ち位置にあります。
- パトリック・マリガン(ステファン・グレアム)
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前作『レット・ゼア・ビー・カーネイジ』に引き続き登場する警官マリガン役は、ベテラン俳優ステファン・グレアム。内に複雑な闇を抱えるキャラクター像を的確に演じ、シンビオートとの接触による変化を重厚に表現しています。控えめながらも緊張感のある演技で、本作の陰影を際立たせています。
視聴者の声・印象













こんな人におすすめ
逆に避けたほうがよい人の特徴
重厚でリアルな人間ドラマを期待している人
テンポの良い物語を好む人(中盤にやや緩急の差あり)
ヴェノムを“完全なヒーロー”として描いてほしい人
シリーズ未視聴で感情移入しにくいと感じる人
映像美や詩的演出を重視する映画ファン
社会的なテーマや背景との関係
『ヴェノム:ザ・ラストダンス』は、エンタメ性の高いアクション作品でありながら、現代社会に通じるいくつかのテーマを内包しています。特に注目すべきは「共生」と「選択」という2つのキーワードです。
本作では、人間であるエディと、地球外生命体ヴェノムという“本来相容れない存在”が、互いを受け入れながら共に生きていく姿が描かれています。これは、現実社会における多様性や異文化理解、多民族共生といった課題のメタファーとして読むこともできるでしょう。異なる価値観や背景を持つ者同士が、いかに衝突し、そして妥協点を見出していくのか。その過程は、多文化社会を生きる私たちにとって非常に示唆的です。
また、ヴェノムのような“制御しきれない力”がもたらす葛藤は、個人が抱える内なる衝動やトラウマ、あるいは精神的疾患との向き合い方にも通じます。社会から逸脱した存在でありながら、エディとの関係を通じて人間らしさを得ていくヴェノムの描写には、マイノリティの肯定的描写としての一面も垣間見えます。
さらに、政府や軍事機関がヴェノムの力を利用しようとする展開は、科学技術やバイオテクノロジーの倫理問題を想起させます。特に、制御不能な力への依存や兵器化への誘惑といったテーマは、現代におけるAIや遺伝子編集技術の暴走リスクとも重なります。
これらの要素を踏まえると、本作は単なるエンタメ作品ではなく、現代社会に生きる我々が直面する複雑な問題群を、フィクションという形で描き出した“寓話的なヒーロー譚”とも言えるのです。
映像表現・刺激的なシーンの影響
『ヴェノム:ザ・ラストダンス』は、シリーズの中でも特に映像表現に力が入っており、ダークでスタイリッシュなビジュアルが印象的です。夜の街を舞台にした戦闘シーンでは、光と影のコントラストを強調したライティングが用いられ、シンビオートの質感や動きがよりリアルに描かれています。
また、ヴェノム特有の“触手”や“飲み込み”の演出は本作でも健在で、視覚的にグロテスクな描写が一部存在します。ただし、全体としてはR指定ではなく、一般のアクション映画と同程度の範囲に収められており、過度な暴力描写は避けられています。流血シーンや破壊的なアクションはあるものの、ホラー的要素はあくまで控えめです。
音響面でも工夫が見られ、ヴェノムの咆哮やシンビオート同士の対峙シーンでは、重低音が響く設計となっており、劇場での鑑賞時には“身体で感じる音”として迫力を増しています。爆発や衝突のシーンでは、音の立体感とともに臨場感を演出しており、映像と音の融合が作品全体の没入感を高めています。
ただし、小さな子どもや刺激に敏感な方には、やや不快に感じる可能性のある描写も一部含まれているため、鑑賞の際には事前にシリーズの雰囲気に慣れておくことをおすすめします。
全体として、映像の美しさやアクションの迫力は今作の大きな見どころのひとつであり、シリーズの集大成にふさわしい“シネマティックな体験”を提供してくれます。
関連作品(前作・原作・メディア展開など)
『ヴェノム:ザ・ラストダンス』は、マーベル・コミック原作の“シンビオート”を題材とした実写映画シリーズの第3作にあたります。本作は完結編として制作されており、前2作と密接に物語が繋がっています。
第1作『ヴェノム』(2018年)では、ジャーナリストのエディ・ブロックが地球外生命体ヴェノムと出会い、共生していく過程が描かれました。異色のダークヒーロー誕生譚として話題を呼び、興行的にも成功を収めました。
第2作『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』(2021年)では、殺人鬼クレタス・キャサディが“カーネイジ”という新たなシンビオートに変貌し、ヴェノムとの激突が展開されます。この作品では、ヴェノムとエディの関係性がさらに深まり、シリーズの軸が確立されました。
観る順番としては、第1作 → 第2作 → 本作の順が基本となります。特に本作は、過去の出来事やキャラクターの変化が前提として描かれるため、前作2作の鑑賞が前提となる構成です。
また、本シリーズはマーベル・スタジオによるMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)とは異なる、ソニー・スパイダーマン・ユニバース(SSU)の一部として展開されています。『モービウス』『クレイヴン・ザ・ハンター(予定)』などと世界観を共有しており、クロスオーバーの可能性も含まれています。
原作との違いとしては、スパイダーマンとの直接的な関係性が映画版では限定的である点が大きく、あくまで独立したヴェノム像として再構築されている点が特徴です。原作ファンにとっては大胆なアレンジと映る部分もあるかもしれませんが、映画単体としての完成度やキャラクターの魅力は十分に楽しめる仕上がりとなっています。
類似作品やジャンルの比較
『ヴェノム:ザ・ラストダンス』は、ダークヒーローというジャンルに属し、アクション性とキャラクター性の両立が魅力の作品です。ここでは、同様の要素を持つ類似作品をいくつか紹介しつつ、共通点や違いを簡単に比較します。
『デッドプール2』 ユーモアと暴力描写を巧みに融合させた異色のヒーロー作品で、ヴェノムの毒舌キャラクター性と共通点があります。両作品とも、主人公が“普通のヒーロー”ではないという点で通じ合っていますが、『デッドプール』のほうがメタ視点や風刺性が強い点が特徴です。
『スパイダーマン3』(2007年) ヴェノムが映画作品として初登場した一作。シンビオートのもたらす“暴走”や“人格の変化”というテーマが共有されており、本シリーズとの比較にも適しています。より王道のヒーロー像が描かれるため、対比的な観点で楽しめます。
『マックス・スティール』 地球外存在との共生というSF設定が共通し、能力を得た青年の成長を描く点でも似ています。アクション主体の展開ですが、作品全体のトーンはややライトで、ヴェノムシリーズの方がダークで複雑な描写が目立ちます。
『寄生獣』(実写・アニメ) 地球外生命体と共生するというコンセプトが極めて類似。特に“自我を持つ他者との共存”という哲学的テーマに興味がある人には、双方が補完的な作品になり得ます。『寄生獣』の方がより内省的かつシリアスな描写が中心です。
『クロウ』 復讐のために蘇った男を描く本作は、ダークな映像美とヒーロー像の陰影において共通項があります。ヴェノムとは直接の関係はありませんが、“光と闇のはざまで葛藤する異形の存在”という点で重なる部分があります。
これらの作品は、ヴェノムの世界観に魅了された観客にとって、世界の見え方をさらに深めてくれる補完的なラインナップと言えるでしょう。「これが好きならこれも」という視点で選ぶと、より多面的なダークヒーロー像に出会えるかもしれません。
続編情報
『ヴェノム:ザ・ラストダンス』は“ヴェノム三部作”の完結編として位置づけられており、主演のトム・ハーディと監督ケリー・マーセルのコメントからも「3部作で完結させる」という制作側の明確な意図が語られています。そのため、シリーズとしての直接的な続編は現在のところ正式には発表されていません。
しかし、ポストクレジットシーンでは今後の展開を示唆する描写が存在しており、特にシンビオートの“神”とされるキャラクター<Knull(ヌル)>の存在や、ヴェノムの“かけら”が残されている描写が話題となっています。これにより、ファンの間ではスピンオフや別作品として物語が続く可能性が取り沙汰されています。
信頼性の高い複数の映画メディアやインサイダーによると、『エージェント・ヴェノム(仮題)』とされるスピンオフ企画が水面下で進行しているとの報道があります。これは、原作コミックにおける“フラッシュ・トンプソン”が主役となるシリーズで、ヴェノムの能力を政府が兵器として利用するという内容になる見込みです。
また、ソニー・スパイダーマン・ユニバース(SSU)の拡張計画の一環として、今後もシンビオートを扱った作品の制作が予定されており、『モービウス』『クレイヴン・ザ・ハンター』とのクロスオーバーを含む構想も浮上しています。これらが実現すれば、ヴェノムの物語は形式を変えて継続される可能性が高いと言えるでしょう。
現時点でのまとめとしては、「三部作としての物語は完結しているが、ヴェノムの世界観は終わっていない」という状況です。今後の展開には引き続き注目が集まっています。
まとめ|本作が投げかける問いと余韻
『ヴェノム:ザ・ラストダンス』は、アクション満載の娯楽作品としての完成度はもちろんのこと、シリーズを通して描かれてきた“異形の存在との共生”というテーマに一つの終止符を打つ作品でもあります。
エディとヴェノムの奇妙なバディ関係は、単なるギミックやコメディ要素にとどまらず、「他者とどう折り合いをつけながら生きるか」「違いをどう受け入れ、自分の一部としていくか」といった、より深い問いを観客に投げかけてきました。本作ではその問いがクライマックスを迎え、2人の“選択”によって強く印象づけられます。
また、戦闘や逃走といった物理的な“戦い”の裏で、本当に描かれているのは「自分をどう受け入れるか」という内面的な戦いであり、それはエディだけでなく、ヴェノムという存在そのものにも当てはまります。どちらかが支配するのではなく、お互いを理解し、共に歩む——それは、現代の分断社会に生きる私たちにとって、非常に象徴的なメッセージといえるかもしれません。
映像面やエンタメ性においてはシリーズ最高の仕上がりでありながら、ストーリーの構造やテーマは意外にも静かで、余韻の残るものでした。最後に残るのは派手な爆発ではなく、「君は誰と共に生きていくか?」という問いです。
本作は、ヴェノムというキャラクターを“モンスター”から“存在としての可能性”へと昇華させた作品とも言えるでしょう。シリーズの集大成であると同時に、“別れ”と“受け継がれる意志”を描いた物語でもあり、その余韻は静かに、しかし確実に観る者の心に残ります。
ネタバレ注意!本作の考察(開くと見れます)
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本作のラストで描かれる“ヴェノムの断片”が別の存在に寄生する描写は、単なる終幕ではなく、新たな始まりの示唆とも読み取れます。これは、ヴェノムという存在が“誰か一人のもの”ではなく、普遍的な概念へと拡張されていく可能性を象徴しているのではないでしょうか。
また、ポストクレジットで登場する赤黒い宇宙空間とカクテリスの映像は、原作で“シンビオートの神”とされる<Knull(ヌル)>の存在を暗示していると見られます。これはヴェノムのルーツを掘り下げる伏線ともなり、今後のスピンオフや拡張世界への布石と言えるでしょう。
シリーズを通して繰り返される“選択”というキーワードも、今作ではより哲学的に扱われています。特にエディとヴェノムが最終的に“人類を守る”という決断を下すシーンは、これまでの逃亡・破壊の文脈とは異なり、彼らが“意志ある存在”として成熟したことを示す象徴的な瞬間です。
さらに深読みするなら、エディとヴェノムの関係性そのものが、“内なる衝動と理性の共存”という精神構造を表現しており、ヴェノムは単なるエイリアンではなく、エディ自身のもう一つの人格=影(シャドウ)として解釈することも可能です。
本作が問いかけるのは、「異質な存在をどう受け入れるか」だけでなく、「自分の中の異質さをどう愛するか」という、きわめてパーソナルで内省的なテーマなのかもしれません。
ネタバレ注意!猫たちの会話(開くと見れます)
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