『メイズ・ランナー』とは?|どんな映画?
『メイズ・ランナー』は、謎に満ちた巨大な迷路に閉じ込められた少年たちが、生き残りをかけて脱出を目指すサバイバル型のSFアクション映画です。
目覚めた場所は、記憶を失った状態で囲い込まれた「グレード」と呼ばれる空間。そこには同じように過去を覚えていない若者たちが共同生活を営んでおり、外には昼夜で構造が変化する迷路が広がっています。閉じ込められた理由も、脱出方法も不明。日々命を賭けて迷路に挑みながら、仲間たちは「ここが何なのか」を探っていくことになります。
ジャンルとしては、SF/サスペンス/スリラー/青春群像劇が混ざり合った構成で、若者たちが極限の状況下でぶつかり合い、成長し、真実へと近づいていく展開が大きな魅力です。
一言で言えば、「謎と死が交錯する“迷宮青春サバイバル”」。スタイリッシュな映像とスリリングな展開で、観る者を物語の核心へと引き込んでいきます。
基本情報|制作・キャスト/受賞歴・公開情報
タイトル(原題) | The Maze Runner |
---|---|
タイトル(邦題) | メイズ・ランナー |
公開年 | 2014年 |
国 | アメリカ |
監 督 | ウェス・ボール |
脚 本 | ノア・オッペンハイム、グラント・ピアース・マイヤーズ、T・S・ノーリン |
出 演 | ディラン・オブライエン、カヤ・スコデラリオ、トーマス・ブロディ=サングスター、ウィル・ポールター、キー・ホン・リー ほか |
制作会社 | ゴッサム・グループ、テンポ・アントレス、TSGエンターテインメント |
受賞歴 | 2015年MTVムービー・アワード「ブレイクアウト・スター賞(ディラン・オブライエン)」ほか |
あらすじ(ネタバレなし)
暗闇の中で目を覚ました少年トーマス。彼が辿り着いたのは、高い壁に囲まれた謎の空間「グレード」だった。名前以外の記憶を失い、なぜそこにいるのかもわからないまま、同じ境遇の少年たちと共同生活を送ることになる。
唯一の出口は、日中のみ開かれる巨大な迷路。しかしその中には、ただの仕掛け以上の恐ろしい存在が潜んでいた。動く迷路、夜ごと変化する構造、そして“脱出できない”という恐怖。なぜ彼らは閉じ込められたのか?
ある日、「初めての少女」が送り込まれてきたことをきっかけに、長らく静かだった均衡が崩れ始める。トーマスはその異変に導かれるように、迷路の謎に迫っていく――。
真実は迷路の向こうにある。その一歩を踏み出す勇気が、すべてを変える。
予告編で感じる世界観
※以下はYouTubeによる予告編です。
独自評価・分析
ストーリー
(3.5点)
映像/音楽
(4.0点)
キャラクター/演技
(3.0点)
メッセージ性
(2.5点)
構成/テンポ
(3.5点)
総合評価
(3.3点)
物語の設定は斬新かつ興味深く、観客を引き込む力は十分にありますが、ストーリーの深みやメッセージ性においてはやや物足りなさを感じる面もありました。映像は迫力と緊張感に満ちており、迷路の構造やアクションシーンは見応えがあります。キャストは若手中心で一定の魅力はあるものの、演技の幅やキャラクター描写の深さには改善の余地がありそうです。
構成とテンポに関しては、序盤から終盤にかけての流れはスムーズで、中だるみは少ない印象。ただし「記憶喪失」「閉じ込められた空間」というテーマが既視感を伴う点もあるため、全体の評価はやや抑えめとなりました。
3つの魅力ポイント
- 1 – 記憶喪失×迷路という斬新な設定
-
本作最大の特徴は、「記憶を失った若者たちが巨大迷路に閉じ込められる」という、ミステリーとサバイバルを融合させた設定です。何も知らされないまま迷宮に放り込まれた登場人物たちの視点を通じて、観客も一緒に謎を解き明かしていく感覚が味わえます。
- 2 – スリルと緊張感に満ちた映像演出
-
日中にしか開かない迷路、夜になると閉じる壁、そして内部に潜む脅威的存在――。限られた時間の中での探索や逃走劇は、リアルで迫力ある映像によって表現されており、観客に緊張感を与え続けます。アクションや視覚効果のクオリティも高く、臨場感たっぷりです。
- 3 – 青春群像としてのドラマ性
-
極限状態に置かれた若者たちが、時に対立し、時に支え合いながら変化していく姿は、単なるサバイバル映画にとどまらない人間ドラマを生み出しています。リーダーシップ、友情、葛藤といったテーマが物語に深みを与え、観客の感情を揺さぶります。
主な登場人物と演者の魅力
- トーマス(ディラン・オブライエン)
-
記憶を失った状態でグレードに送り込まれる本作の主人公。好奇心旺盛で行動力に富み、物語の鍵を握る存在として活躍します。演じるディラン・オブライエンは、当時若手ながらも高い身体能力と表現力で観客を魅了。迷いと決意の入り混じる複雑な心情を丁寧に演じ、作品を牽引しています。
- ギャリー(ウィル・ポールター)
-
トーマスに対して強く反発し、秩序を重んじる保守的な立場を取る存在。時に暴走も見せますが、その根底には仲間を守ろうとする信念があります。演じるウィル・ポールターは、その鋭い目つきと迫真の演技で「敵役」としての緊張感を生み出しつつも、キャラクターに深みを与えています。
- ミンホ(キー・ホン・リー)
-
迷路を走り抜ける“ランナー”のリーダー。冷静かつ機敏で、過酷な任務を黙々とこなす姿が印象的です。キー・ホン・リーは、アジア系俳優としてハリウッドで注目を集めた存在で、寡黙ながら信頼感を漂わせる演技が物語に安定感をもたらしています。
- テレサ(カヤ・スコデラリオ)
-
物語中盤に唯一の女性として登場し、グレードに新たな波紋をもたらすミステリアスな存在。記憶の断片を断続的に持っており、物語の核心に関わる重要人物です。カヤ・スコデラリオはクールで芯の強いキャラクターを的確に表現し、物語に緊張感と奥行きを加えています。
視聴者の声・印象













こんな人におすすめ
逆に避けたほうがよい人の特徴
スピーディな展開や複雑な謎解きに疲れてしまう人
世界観の説明が少ないと混乱しやすい人
リアリティ重視で非現実的な設定に入り込めない人
深い人間ドラマや哲学的なテーマを期待している人
一話完結型の作品を好む人
社会的なテーマや背景との関係
『メイズ・ランナー』は単なるサバイバル映画にとどまらず、現代社会の構造や人間の在り方を暗喩的に描いた作品とも言えます。特に注目すべきは、「巨大迷路」という閉鎖環境が象徴する、管理社会や監視社会のメタファーです。
物語の舞台である「グレード」は、少年たちが外界から隔離され、一定のルールと秩序の中で共同生活を強いられる空間です。これは、現代の教育制度や企業社会、さらには社会的実験としての人間管理といったテーマと重ねて捉えることができます。「なぜここにいるのか」を知らされず、それでも日々のルールに従う彼らの姿は、与えられた社会的枠組みの中で疑問を持たずに生きる人々の姿と重なるのではないでしょうか。
また、記憶を失っているという設定は、「個人のアイデンティティの喪失」や「自分で選択する力を奪われた現代人」を象徴しています。思考停止の状態から、自らの意思で「迷路(=人生)」に踏み出すという展開は、自己決定や主体性を取り戻すプロセスとしても読み解けます。
加えて、支配構造や情報の非対称性といったテーマも含まれており、物語の背後には「一部の者が情報を握り、その他大勢を制御する世界構造」への批判的視点がにじんでいます。これは今日のデジタル社会、国家と市民、あるいは巨大企業と個人の関係にも通じるものがあります。
このように、『メイズ・ランナー』はエンタメ性に優れたSFでありながらも、現代社会の在り方や人間の尊厳、自由意志の意味について考えさせる要素を多く含んでいます。そうしたテーマに気づけるかどうかで、本作の見え方は大きく変わってくるでしょう。
映像表現・刺激的なシーンの影響
『メイズ・ランナー』は、映像的に非常にダイナミックで臨場感あふれる演出が特徴の作品です。巨大迷路の構造や変化の様子、疾走感のあるカメラワーク、スピーディな編集によって、観客は物語の中に引き込まれるような感覚を味わうことができます。
特に、迷路内部でのランナーたちの移動や、グリーバー(迷路内に潜むクリーチャー)との遭遇シーンは、スリルと緊張感に満ちた描写が続きます。暗闇や不規則に動く壁、機械的な怪物の出現などは、ホラー的な驚きの要素も含んでおり、一部の視聴者には刺激が強く感じられる可能性があります。
暴力表現については、過激さを煽るような描写ではないものの、サバイバル状況下での衝突や負傷、死亡描写などが一定数含まれています。血の表現は控えめですが、登場人物が突然命を落とす展開や、緊張の持続によって精神的なストレスを感じる場面もあるため、視聴にはある程度の心構えが必要です。
一方で、映像美という観点では、自然と人工の融合的な世界観が巧みに作り込まれており、砂埃や光の差し込み、鉄と緑のコントラストがビジュアル的な印象を強めています。音響面でも迷路の動作音、怪物のうなり声、静寂との緩急が計算されており、音と映像の相乗効果による没入感が高く評価されています。
総じて本作は、10代以上の視聴者を主な対象とした作品であり、年齢制限は比較的緩やかではあるものの、小さな子どもと一緒に観るには少し注意が必要な場面も存在します。刺激的な描写を含む作品であることを踏まえ、視聴のタイミングや環境にも配慮したいところです。
関連作品(前作・原作・メディア展開など)
『メイズ・ランナー』は、ジェームズ・ダシュナーによる同名小説を原作とした作品です。原作小説は三部作構成となっており、本作はその第1作に該当します。映画は原作の基本設定を忠実に再現しつつも、映像表現に合わせた構成やキャラクターのアレンジが施されています。
■ 原作小説シリーズ(既刊)
- 第1作:『The Maze Runner』(2009)※本作の原作
- 第2作:『The Scorch Trials』(2010)
- 第3作:『The Death Cure』(2011)
この三部作に加え、前日譚として執筆された小説が2作品存在します。
- 『The Kill Order』:シリーズの13年前を描く物語
- 『The Fever Code』:『The Kill Order』と第1作の間の時系列
さらに、2022年以降には「The Maze Cutter」三部作としてスピンオフ続編の出版がスタートしており、新たな読者層に向けた展開が進行中です(第3巻は2025年9月刊行予定)。
■ 映画版との違い
映画ではテンポや映像映えを重視した演出が多く、特にアクションシーンやクリーチャーの描写に力が入っています。一方、原作は心理描写や状況説明が丁寧で、主人公たちの内面やグレードの成り立ちに関する情報量も豊富です。映画は視覚的にドラマチックな一方、原作は世界観を深掘りしたい人におすすめです。
■ 観る順番の目安
映画を楽しみたい場合は以下の順番で観るのが基本です:
- 『メイズ・ランナー』(2014)
- 『メイズ・ランナー2:砂漠の迷宮』(2015)
- 『メイズ・ランナー:最期の迷宮』(2018)
その後に原作を読むことで、より深い理解や異なる視点を得ることができます。
類似作品やジャンルの比較
『メイズ・ランナー』は、若者たちが理不尽な状況下で生き延び、真実を探るディストピア型サバイバル映画として、同ジャンルの多くの作品と共通点を持っています。以下は類似したテーマや雰囲気を持つ代表的な作品とその特徴です。
■ 『ハンガー・ゲーム』シリーズ
全体主義的な国家により若者が生存ゲームに強制参加させられる設定。閉鎖環境・成長物語・謎の権力構造など、本作との共通点が多く、「若者×生存×革命」という構図が魅力。
■ 『ダイバージェント』シリーズ
社会が性格タイプで分断された世界観で、主人公が“枠に収まらない存在”として立ち上がる物語。『メイズ・ランナー』と同様、自分の正体と世界の真実に向き合う構成が似ています。
■ 『バトル・ロワイヤル』
より過激で残酷なサバイバル設定。日本発の衝撃作で、閉鎖空間と心理戦が主軸。『メイズ・ランナー』がPG-13向けのエンタメであるのに対し、こちらはより暴力的でリアルな描写が特徴。
■ 『ヴォイジャーズ』
宇宙船という密閉空間で若者たちが制御不能になっていく物語。秩序の崩壊と集団心理の危うさを描いており、極限環境における人間性の変化という視点で近い作品です。
■ 『エンダーのゲーム』
若者が戦術訓練を通じて世界を救う使命を背負う物語。『メイズ・ランナー』よりもSF寄りで、心理戦やリーダーシップの成長に重きを置いている点が特色。
これらの作品に共通するのは、「閉じられた環境」「若者たちの成長」「隠された真実」といった要素です。一方で、暴力描写の濃さや舞台のスケール、政治色の強さなど、作品ごとに個性もはっきり分かれています。
『メイズ・ランナー』が好きなら、きっとこれらの作品にも引き込まれるはず。それぞれの視点からディストピアの世界を旅してみてください。
続編情報
『メイズ・ランナー』シリーズには、既に三部作の映画が制作されており、2018年公開の『メイズ・ランナー:最期の迷宮』をもって一旦完結しています。
しかし、2024年5月に新たな続編企画が進行中であることが発表されました。この新作は「セミ・シークエル」やリブート的な位置付けで、オリジナルの物語の延長線上にありながらも、新たなキャラクターや設定が加わる予定です。
続編の正式タイトルは未発表ですが、脚本は映画『トランセンデンス』のジャック・パグレンが担当し、監督のウェス・ボールが製作に復帰すると報じられています。公開時期やキャストは現時点で未定です。
ストーリー構成は、従来の三部作の続編や前日譚とは異なり、「続編でも前日譚でもない新たな展開」とされており、シリーズの世界観を刷新する試みとされています。
主演のディラン・オブライエンは、現時点で新作への出演について正式なオファーを受けていないものの、参加に前向きな意向を示しています。
配信や公開に関しては公式の詳細発表が待たれる状況であり、ファンは続報に注目しています。
まとめ|本作が投げかける問いと余韻
『メイズ・ランナー』は、単なるサバイバルアクション映画の枠を超え、「閉ざされた世界に囚われた若者たちの成長と葛藤」を通じて、私たちに多くの問いを投げかけます。彼らが直面する迷路は、現代社会の不透明さや人間関係の複雑さの象徴ともいえるでしょう。
物語を通じて感じるのは、未知に立ち向かう勇気、仲間との絆、そして自己の存在意義を探求する姿です。閉鎖された環境でのサバイバルは、私たち自身の生き方や選択のメタファーであり、視聴後には自分自身の「迷路」について考えさせられます。
また、緊迫感あふれる映像表現やスリリングな展開が最後まで観る者の心を掴み続ける一方で、深く掘り下げられた人間ドラマや社会的テーマも織り交ぜられている点が本作の魅力です。単なる娯楽に留まらず、見る者の内面に響く余韻を残す作品と言えます。
一方で、全ての謎が解明されるわけではなく、次なる展開を予感させる余地を残しているため、観る者の想像力や解釈を刺激します。それが本作が長く語り継がれる理由の一つでしょう。
総じて、『メイズ・ランナー』は刺激的な映像体験と深いテーマ性を兼ね備え、観る人それぞれの価値観や感性によって異なる感想が生まれる、挑戦的で味わい深い青春サバイバル映画です。鑑賞後にはぜひ、物語が投げかける問いと余韻をじっくり味わってみてください。
ネタバレ注意!本作の考察(開くと見れます)
OPEN
本作の根底には、「管理社会」と「個人の自由」というテーマが隠れていると考えられます。迷路という閉鎖空間は、外部からの厳しい監視と制御を象徴し、登場人物たちは自由を奪われた存在として描かれています。
また、記憶喪失という設定は単なるプロットの装置に留まらず、自己同一性やアイデンティティの喪失と再構築を象徴しているように見えます。特にトーマスが徐々に自らの記憶と向き合い、迷路の真実に迫る過程は、自己理解の旅路と重なります。
伏線としては、テレサの存在や“グリーバー”の役割、そして外部世界の実態に関する断片的な情報が散りばめられており、観客の解釈によって物語の意味合いが変化します。例えば、彼らが置かれた環境は単なる実験なのか、あるいは未来の社会の縮図なのか、明確な答えは示されていません。
一方で、作品の終盤にかけて描かれる「希望」と「犠牲」のバランスも重要なテーマであり、登場人物たちが直面する選択は単なる生死を超えた倫理的な問いかけとなっています。
このように、断定を避けつつも、『メイズ・ランナー』はただのアクション映画ではなく、多層的なテーマを持つ作品であり、視聴者の想像力を刺激する余地を多く残していると言えるでしょう。あなたはこの迷路の真実をどう解釈しますか?
ネタバレ注意!猫たちの会話(開くと見れます)
OPEN




















