『マトリックス レザレクションズ』とは?|どんな映画?
『マトリックス レザレクションズ』は、仮想現実と現実の境界が揺らぐ世界で、人間の意識や選択の意味を問い直すSFアクション映画です。
1999年に始まった『マトリックス』シリーズの第4作にあたり、20年の時を経て再びネオとトリニティの物語が描かれます。映像技術の進化とともに、かつての哲学的テーマが現代的な形で再構築され、シリーズの新たな幕開けを感じさせる内容となっています。
全体としては「記憶」「選択」「自己認識」といった抽象的なテーマを、スタイリッシュなアクションとともに描く、思索型エンターテインメントとも言える作品です。
基本情報|制作・キャスト/受賞歴・公開情報
タイトル(原題) | The Matrix Resurrections |
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タイトル(邦題) | マトリックス レザレクションズ |
公開年 | 2021年 |
国 | アメリカ |
監 督 | ラナ・ウォシャウスキー |
脚 本 | ラナ・ウォシャウスキー、デイヴィッド・ミッチェル、アレクサンダー・ヘモン |
出 演 | キアヌ・リーブス、キャリー=アン・モス、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世、ジェシカ・ヘンウィック、ジョナサン・グロフ |
制作会社 | ワーナー・ブラザース、ヴィレッジ・ロードショー・ピクチャーズ |
受賞歴 | サターン賞 ノミネート(最優秀SF映画賞、助演女優賞、メイクアップ賞) |
あらすじ(ネタバレなし)
ネオことトーマス・アンダーソンは、現実と仮想現実の境界が曖昧な世界で、再び不穏な違和感に囚われていた。平穏に見える日常の中で、彼は不可解な夢や記憶の断片に悩まされ、精神的な不安を抱えている。
そんな彼の前に、かつてどこかで見たことのある女性・トリニティとよく似た人物が現れる。彼女は本当にかつてのトリニティなのか? そして自分が見ている「現実」は果たして本物なのか?
謎めいた青年や新たなモーフィアスとの出会いを通じて、ネオは再び選択を迫られる。自分の意志で真実に目を向けるか、それとも仮初めの現実に身をゆだねるのか——
『マトリックス レザレクションズ』は、記憶と存在、愛と自由をめぐる新たな問いが交錯する、シリーズ最新作の幕開けです。
予告編で感じる世界観
※以下はYouTubeによる予告編です。
独自評価・分析
ストーリー
(3.0点)
映像/音楽
(4.5点)
キャラクター/演技
(3.5点)
メッセージ性
(3.0点)
構成/テンポ
(2.5点)
総合評価
(3.3点)
『マトリックス レザレクションズ』は、旧作ファンへのメッセージ性やノスタルジーを強く意識した構成である一方、革新性という面ではやや物足りなさが残る内容です。ストーリーはシリーズの中でも複雑さを増し、過去作を踏まえていないと理解しづらい部分もありました。
一方で映像表現や音楽はシリーズの持つ独特な世界観を丁寧に再構築しており、スタイリッシュな演出とアクションは健在。キャスト陣の演技も安定しており、新キャラクターの存在も魅力的でした。
ただし、テンポや構成はやや冗長で、特に前半の説明的な展開が続く点で評価を落としています。シリーズの総括的な意味合いが強く、エンタメ作品としてはやや観る人を選ぶ印象でした。
3つの魅力ポイント
- 1 – トリニティの再解釈
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シリーズの象徴的存在であるトリニティが、今作では自立した意志と力を持つ存在として再構築されています。かつてのヒロイン像から進化し、ネオと対等な立場で物語を牽引する姿は、現代的な価値観とも呼応し、観る者に新鮮な印象を与えます。
- 2 – ノスタルジーと再構築の融合
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前作へのオマージュやセルフリメイク的な演出が多く散りばめられており、シリーズファンにとっては懐かしさと驚きが同居する演出が魅力的です。旧キャラクターの登場や印象的なセリフの再利用など、記憶を刺激する要素が満載です。
- 3 – 映像美とモダンなスタイル
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『マトリックス』特有のスタイリッシュなアクションやビジュアル表現は健在で、現代のVFX技術によってより洗練されたものに進化しています。モダンな色彩設計やライティングも作品世界に深みを与えており、視覚的な没入感を高めています。
主な登場人物と演者の魅力
- ネオ(キアヌ・リーブス)
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本作でも主人公を演じるのはキアヌ・リーブス。年齢を重ねたネオとして、かつてのカリスマ性に加え、内面の葛藤や弱さも繊細に表現しています。特に静かなシーンでの存在感は圧倒的で、「救世主」としての役割と「ただの男」としての狭間で揺れる姿が印象的です。
- トリニティ(キャリー=アン・モス)
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トリニティ役として復帰したキャリー=アン・モスは、シリーズを象徴する強く美しい女性像を体現し続けています。今作では母親としての一面も見せ、戦士である前に一人の人間として描かれるシーンが増加。アクションと感情表現の両立が際立つ演技です。
- モーフィアス(ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世)
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過去作でローレンス・フィッシュバーンが演じたモーフィアスとは別の存在として登場する新モーフィアス。ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世が演じる彼は、カリスマとユーモアを併せ持つ新世代の案内役として、新たな魅力を提示します。フィッシュバーン版との違いを楽しむのも本作の醍醐味です。
- スミス(ジョナサン・グロフ)
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かつての敵スミスが、今回はジョナサン・グロフによって新たに演じられます。冷徹さと不気味な余裕を持ち合わせた演技は秀逸で、ヒューゴ・ウィーヴィング版とは異なるスマートさが際立ちます。新たな時代のスミス像として印象に残るキャラクターです。
視聴者の声・印象













こんな人におすすめ
逆に避けたほうがよい人の特徴
テンポの早い展開や明快なストーリーを求める人
過去作を観ていない、もしくは内容を覚えていない人
アクション映画=爽快感重視と考えている人
難解な設定や抽象的なテーマに抵抗がある人
旧作のイメージを壊されたくないと思っている人
社会的なテーマや背景との関係
『マトリックス レザレクションズ』は、単なるSFアクションにとどまらず、現代社会における「現実」と「虚構」の境界をテーマに据えた作品です。スマートフォンやSNSが当たり前となった現代において、私たちが接している情報の多くがフィルター越しであるという現実。それを象徴するかのように、劇中では仮想現実に囚われた人間たちが、自らの存在を疑う様が描かれています。
また、ネオが「選ばれし者」として再び自らの役割を受け入れる過程は、自己肯定感やアイデンティティの再構築という現代的なテーマとも重なります。これは特に、コロナ禍以降「自分は何のために生きているのか」と考える機会が増えた私たちにとって、強い共感を呼ぶ設定です。
トリニティの描かれ方にも注目すべきです。かつてはネオの“サポート役”として描かれていた彼女が、今作では自立した存在として力を発揮し、物語の鍵を握る存在となっています。これはジェンダー観や女性のエンパワーメントを反映した演出であり、単なる続編にとどまらない現代的な再定義とも言えるでしょう。
さらに、劇中の「選択」や「自由意志」を巡る描写は、アルゴリズムによる管理社会への皮肉としても読み取れます。何を見せるか、何を信じさせるかを制御される世界は、私たちが毎日触れているデジタル社会の縮図でもあります。
このように、本作は仮想空間のスリルやアクションに加えて、私たちが暮らす現代社会への問いかけを随所に盛り込んでおり、娯楽と批評性を両立させた一本と言えるでしょう。
映像表現・刺激的なシーンの影響
『マトリックス レザレクションズ』は、映像と音響の両面で極めて高い演出クオリティを誇る作品です。シリーズ特有の“バレットタイム(スローモーションを活かしたアクション)”も健在で、さらに現代のVFX技術によって洗練されたビジュアル体験が実現されています。ネオとトリニティの戦闘シーンや仮想空間の崩壊を描く映像は、没入感・スリルともに群を抜いており、劇場での鑑賞時には圧倒される迫力を持ちます。
音響面では、サウンドデザインが非常に緻密に構築されており、現実と仮想空間の切り替わりが音の違いでも明確に演出されています。銃声や爆発音、無音の静寂との対比など、音の緩急が映像と一体化しており、感覚的な緊張感を生み出しています。
一方で、刺激的な描写としては戦闘・銃撃・肉体破壊を伴うシーンが複数存在し、アクション描写にはそれなりの暴力性が含まれます。ただし、いわゆるグロテスクな演出や過剰な流血などは控えめで、全年齢向けではないものの、R指定にまで至らない程度に調整されています。暴力的なシーンに耐性のない方や小さなお子様と一緒に観る予定の方は、事前に心づもりをしておくとよいでしょう。
性的描写やホラー的な演出についてはほとんど見られず、むしろ映像・思想面での刺激が中心です。特にメタ構造の会話や夢か現実か分からない映像処理は、観客自身の思考を刺激する“知的な負荷”を与えてくるため、集中力と理解力を求められる場面もあります。
総じて本作は、映像・音響・編集の三拍子がそろった視覚的・感覚的なエンターテインメントであると同時に、観る人に「問い」を投げかける知的な映像体験でもあります。刺激性は高いものの、嫌悪感を誘うような表現は抑えられており、映画的快感と哲学的思索が同居する仕上がりとなっています。
関連作品(前作・原作・メディア展開など)
『マトリックス レザレクションズ』は、『マトリックス』シリーズの第4作にあたる位置付けであり、過去3作を踏まえた上で鑑賞することで、物語の深みやキャラクターの変遷をより味わえる構成となっています。以下、これまでの関連作品を紹介します。
■ 本編シリーズ(公開順)
- 『マトリックス』(1999年)
- 『マトリックス リローデッド』(2003年)
- 『マトリックス レボリューションズ』(2003年)
- 『マトリックス レザレクションズ』(2021年)※本作
シリーズは基本的に公開順=時系列順で進行するため、鑑賞する際は公開順での視聴が推奨されます。特に『マトリックス リローデッド』と『マトリックス レボリューションズ』は前後編的な関係にあるため、セットで観るのが理想です。
■ アニメーション作品『アニマトリックス』
2003年に公開された短編集『アニマトリックス』は、シリーズの世界観をより深く理解する上での補完的な役割を果たしています。人類と機械の戦争の歴史や、マトリックス世界の哲学的基盤を描いたエピソードが含まれており、本編では語られない側面を補足してくれます。
■ ゲーム・その他メディア
- 『Enter the Matrix』(2003年)
- 『The Matrix: Path of Neo』(2005年)
- 『The Matrix Online』(2005年、オンラインRPG)
これらのゲーム作品は、映画本編と並行した時間軸で展開されるストーリーや、ネオとは異なる視点のキャラクターたちの物語を描いています。特に『Enter the Matrix』は映画『マトリックス リローデッド』と同時期の物語が描かれ、シリーズを多角的に楽しめるメディア展開の一つとなっています。
加えて、過去には公式のコミック『The Matrix Comics』も発行されており、哲学的・サイバーパンク的なモチーフをさらに掘り下げる世界観拡張が行われていました。
このように『マトリックス』シリーズは、映画だけでなくアニメ・ゲーム・書籍といった複数のメディアを横断しながら世界観を構築しており、本作単体でも楽しめるものの、関連作品と合わせて体験することで、より深い理解と没入が可能となる作品です。
シリーズ
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類似作品やジャンルの比較
『マトリックス レザレクションズ』は、SFアクションや哲学的テーマを含むジャンルに位置し、視覚的にも思想的にも印象に残る作品です。ここでは、同様の要素を持つ類似作品を紹介し、共通点や違いを簡潔に比較します。
■ ブレードランナー(1982)
人間と機械の違い、自我とは何かという哲学的テーマを描いたサイバーパンクの金字塔。未来都市の映像美と陰鬱な世界観は『マトリックス』と共鳴しますが、より静的で詩的なトーンが特徴です。
■ ゴースト・イン・ザ・シェル(1995)
電脳化された社会におけるアイデンティティの喪失と再構築を描くアニメ作品。『マトリックス』の制作陣が多大な影響を受けたことで知られており、スタイル・思想面ともに共通点が多い一本です。
■ イーオン・フラックス(2005)
ディストピア世界での女性戦士を描くアクション作品。クールで前衛的なビジュアルが印象的で、トリニティに通じるスタイリッシュな女性像を好む人に向いています。
■ インセプション(2010)
夢と現実の境界が曖昧になる世界で、意識と選択の自由をテーマに描くSF映画。『マトリックス』と同様に観客の思考を揺さぶる構造を持ち、リアルと仮想の交錯が魅力です。
■ ウルトラヴァイオレット(2006)
未来世界を舞台に、戦闘能力を持つ女性主人公が活躍するスタイリッシュアクション。映像・衣装・演出がマトリックス的でありながら、よりコミック的でエンタメ性が強め。
■ アンダーワールド シリーズ
ヴァンパイアと人間の戦いを描くダークアクション。クールな色彩と女性主人公のアクションという点で近い印象ですが、よりファンタジー寄りの構成です。
これらの作品は、いずれも『マトリックス』シリーズとテーマ性・映像表現・キャラクター造形のいずれかにおいて共通点を持ちつつ、それぞれの個性で異なる魅力を放っています。「仮想と現実」「自由と制御」「存在の意味」といった問いかけに魅力を感じる方であれば、これらの作品群もきっと楽しめるはずです。
続編情報
『マトリックス レザレクションズ』の公開以降、ファンの間では続編の有無が注目されてきましたが、2024年4月に続編の正式な制作発表が行われたことで、シリーズ第5作の存在が明らかになりました。以下に現時点で判明している情報をまとめます。
■ 続編の有無とタイトル・公開時期
続編は現時点でタイトル未定ですが、通称『マトリックス5(仮)』として報道されています。公開時期は未発表であり、現在は企画開発段階にあります。
■ 制作体制(監督・脚本・製作)
新作の監督・脚本は『キャビン』や『オデッセイ』の脚本で知られるドリュー・ゴダードが務め、シリーズの共同創始者であるラナ・ウォシャウスキーは製作総指揮として関与。なお、リリー・ウォシャウスキーは本作には参加していないとされています。
■ キャスト情報
現時点でキアヌ・リーブスやキャリー=アン・モスの続投は未定です。関係者のコメントでは、物語や設定に応じて復帰の可能性もあるとされていますが、明確な発表はありません。
■ ストーリー構成・形態
現段階では詳細なストーリー構成は未発表ですが、報道によれば本作は前作『レザレクションズ』の続編という位置づけではなく、「新たな方向性」を模索するリブート的な性格を持つ可能性が示唆されています。スピンオフやプリクエルではなく、正式なシリーズ継続作品として構想されているとの見方が有力です。
シリーズの世界観を受け継ぎつつ、新たな視点やテーマを導入することが予想される『マトリックス5(仮)』。今後の発表やティザー映像の公開が待たれる段階ですが、再び“マトリックス”の扉が開く日は遠くないかもしれません。
まとめ|本作が投げかける問いと余韻
『マトリックス レザレクションズ』は、かつて世界に衝撃を与えたシリーズの帰還として、多くの期待と共に公開されました。その中で本作は、単なる懐古やファン向けのサービスに留まらず、「選択すること」「信じること」「自分を再定義すること」という普遍的な問いを、新たな映像美とともに提示しています。
ネオとトリニティという旧知のキャラクターを通して描かれる物語は、過去の物語をなぞるだけではなく、現代における“再出発”や“再構築”の象徴でもあります。それは監督ラナ・ウォシャウスキー自身の創作意欲の再燃であり、人生や創作活動におけるブランクと復活を体現しているかのようです。
本作が特徴的なのは、アクションやVFXの進化はもちろんですが、観る人の思考に語りかけるメタ的な視点が作品全体に織り込まれている点です。劇中で「これはゲームか?映画か?現実か?」という問いが繰り返されるように、私たちもまた、目の前の“現実”が本物なのかどうかを考えさせられます。
同時に、記憶・愛・自由といったテーマが、重苦しくなりすぎず丁寧に描かれており、「自分の人生を誰がコントロールしているのか?」「自分の本当の姿とは何か?」という根源的な問いを、物語として感じ取ることができるでしょう。
決して万人にとってわかりやすいエンタメ作品ではないかもしれませんが、「理解する映画」ではなく「感じる映画」としての強度が、本作には確かに存在します。
観終わった後、きっと心のどこかに残るはずです。「あなたは、赤いピルと青いピル、どちらを選びますか?」という問いが。
ネタバレ注意!本作の考察(開くと見れます)
OPEN
『マトリックス レザレクションズ』は、旧三部作を再起動するだけの続編ではなく、“記憶”と“物語”のメタ構造そのものに切り込む意欲作として設計されています。特に中盤の「マトリックスは実はゲームだった」という設定は、旧作の出来事すらフィクションとして再定義し、観客に現実/虚構の境界を再考させます。
この設定により、ネオ=トーマス・アンダーソンは「自身の記憶に基づく物語に生きる人物」という、メタ的な存在となります。つまり彼は“物語の中の主人公”であると同時に、“物語を生み出す側=創作者”の役割も持っているとも読み取れるのです。
さらに本作では、トリニティが“救世主”の役割を共有・継承するような展開が描かれます。これは単なる男女逆転の演出ではなく、“2人でひとつ”の新たな主体を示しているとも捉えられます。ネオ単独では起こせなかった力が、トリニティとの再会によって初めて発動する点は、愛・共感・協働といったテーマの暗示とも考えられるでしょう。
また、新たなスミスが“敵”でありながら“理解者”のような立ち位置を取ることも象徴的です。彼は“自由”を奪う存在であると同時に、“システムの変化”に巻き込まれた被害者とも見なせる存在であり、善悪の境界線が曖昧になった本作の構造を象徴しています。
最終盤、ネオとトリニティが空を飛びながら「今度は私たちが世界を作る番」と語るシーンは、支配されたシステムからの脱却=物語からの解放を暗示しているようにも見えます。これはまさに“マトリックス”というフレームそのものへの挑戦であり、観客にも「あなたはまだ枠の中にいますか?」と問いかけているかのようです。
本作を深読みすればするほど、意図的に解釈の余白が残されており、「結局ネオは何者だったのか?」「トリニティの覚醒は誰によるものだったのか?」といった問いが頭を離れません。明確な答えを提示しない構造こそが、観る者の想像力を刺激するよう設計されているとも言えるでしょう。
ネタバレ注意!猫たちの会話(開くと見れます)
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