『呪術廻戦0』とは?|どんな映画?
『呪術廻戦0』は、呪霊と呼ばれる存在と呪術師たちの戦いを描くダークファンタジーアニメ『呪術廻戦』の前日譚にあたる劇場版です。
主人公はTVシリーズとは異なり、特級呪術師「乙骨憂太」。彼の悲しい過去と成長、そして呪術高専での仲間たちとの出会いを描きます。
ジャンルとしては、バトルアクションとホラー要素を含みつつ、青春や喪失、愛と呪いといった重厚な人間ドラマも内包しています。
その映画を一言で言うと――「愛する人を喪った少年が、“呪い”と向き合いながら再び人を信じていく物語」です。
基本情報|制作・キャスト/受賞歴・公開情報
タイトル(原題) | Jujutsu Kaisen 0 |
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タイトル(邦題) | 呪術廻戦0 |
公開年 | 2021年 |
国 | 日本 |
監 督 | 朴性厚(パク・ソンフ) |
脚 本 | 瀬古浩司 |
出 演 | 緒方恵美、花澤香菜、小松未可子、内山昂輝、関智一 |
制作会社 | MAPPA |
受賞歴 | 第45回日本アカデミー賞 優秀アニメーション作品賞 受賞 |
あらすじ(ネタバレなし)
かつて幼なじみの少女・祈本里香を事故で亡くし、その魂が呪いと化して取り憑いてしまった少年・乙骨憂太。
強大な「特級過呪怨霊」となった里香の力を制御できず、心を閉ざしていた乙骨は、呪術高専の教師・五条悟に導かれ、仲間たちとともに“呪術”を学び始めます。
だが、彼を待ち受けていたのは、ただの訓練ではありませんでした。次第に明らかになる里香の呪いの真実と、乙骨に襲いかかる呪詛師・夏油傑の思惑とは…?
「大切な人の死を受け入れるとは、どういうことか――」
乙骨の“戦い”は、やがて彼自身の“存在意義”へとつながっていきます。
予告編で感じる世界観
※以下はYouTubeによる予告編です。
独自評価・分析
ストーリー
(4.0点)
映像/音楽
(4.5点)
キャラクター/演技
(4.0点)
メッセージ性
(3.5点)
構成/テンポ
(3.5点)
総合評価
(3.9点)
『呪術廻戦0』は、原作ファンの期待に応えるストーリー展開とキャラクター描写で高評価に値します。特に映像のクオリティは劇場作品として非常に高く、音楽も物語のテンションを引き上げる要素として機能しています。
一方で、初見者にはやや説明不足な場面もあり、背景知識のない観客にとってはやや敷居が高い部分が見受けられました。また、テンポも中盤で若干緩む印象があり、構成面ではややマイナス要素があります。
全体としては「ジャンプ映画」としての完成度は高く、アニメ映画としても水準以上。ただし、評価を甘くしすぎないよう、あえて総合評価3.9点という厳しめの採点としています。
3つの魅力ポイント
- 1 – 圧巻の呪術バトル演出
本作の最大の魅力は、まさにアニメーションの限界に挑むような戦闘シーン。特級呪霊との激突や五条悟の“無下限呪術”の演出は、視覚的にも情報量的にも圧倒されるクオリティで、MAPPAの作画力が炸裂しています。
- 2 – 乙骨憂太という異質な主人公
TVシリーズの虎杖悠仁とは一線を画す“陰”の雰囲気を持った乙骨。彼の内面の葛藤や、かつての恋人・里香への想いが物語に重みと切なさを与えており、観る者の感情を揺さぶります。
- 3 – 敵キャラ・夏油傑のカリスマ性
敵対する呪詛師・夏油傑のキャラクターも本作の見どころの一つ。強い信念と矛盾を抱える彼の存在が、単なる“悪役”を超えた人間的な深みをもたらし、物語全体の魅力を底上げしています。
主な登場人物と演者の魅力
- 乙骨憂太(CV:緒方恵美)
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本作の主人公であり、悲しき過去を背負った少年。繊細かつ情感豊かな乙骨の内面を、ベテラン声優・緒方恵美が圧巻の表現力で演じきる。特に感情の振れ幅や、叫び・祈りのシーンでの演技には凄みがあり、観客の心を掴む。
- 祈本里香(CV:花澤香菜)
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乙骨の幼なじみにして、呪いとして取り憑く少女。花澤香菜の柔らかで可憐な声は、生前の無垢な里香の印象を鮮やかに残す。一方で、呪霊化したあとの恐ろしくも愛情深い存在感も見事に演じ分けている。
- 五条悟(CV:中村悠一)
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呪術高専の教師であり、最強の呪術師。中村悠一の安定感ある演技が、五条の余裕とカリスマ性、そして教師としての人間味を巧みに表現している。時折見せるユーモアと凄みに、観客は自然と引き込まれる。
- 夏油傑(CV:櫻井孝宏)
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本作の敵役。理想と狂気を併せ持つ複雑なキャラクターであり、その多層的な人物像を櫻井孝宏が巧みに演じている。穏やかな声の裏にある狂信的な意志が、観る者に不穏な余韻を残す。
視聴者の声・印象













こんな人におすすめ
逆に避けたほうがよい人の特徴
バトル中心のアニメやダークファンタジーに興味がない人
TVシリーズ未視聴で前提知識なしに物語を把握したい人
テンポの速い展開や軽快なノリを期待している人
恋愛要素をメインに求める人
呪いや死といった重たいテーマに抵抗がある人
社会的なテーマや背景との関係
『呪術廻戦0』は一見すると超常的な呪いと戦うバトルアニメですが、その根底には現代社会における“孤独”や“喪失”、“他者とのつながり”という普遍的なテーマが込められています。
主人公・乙骨憂太は幼なじみの死をきっかけに心を閉ざし、社会から孤立してしまいます。その姿は、現実でも深いトラウマを抱えた人や、喪失体験によって生きづらさを感じている人々の姿と重なります。
また、呪術高専という場所は「特異な力を持つ者たちが生きるための居場所」であり、そこにいる仲間たちとの出会いによって乙骨は次第に再生していきます。これは、多様性を受け入れるコミュニティの大切さや、「自分のままでいられる場所」の必要性を象徴していると解釈できます。
敵である夏油傑もまた、「呪術師以外は不要」という過激な思想を持ち、それが差別や排除思想の象徴として描かれています。つまり、彼の存在は現代の排外主義や選別主義への批判的メタファーとしても読み解くことが可能です。
さらに、「呪い」は単なるホラー要素ではなく、人々の恐怖・嫉妬・怒りといった負の感情が実体化したもの。これは、心の傷や社会の歪みが放置されることで暴走し、周囲に影響を及ぼすという教訓にもつながっていきます。
こうした構造は、若年層の精神的ケア、いじめや孤立の問題、多様性を巡る議論など、現代日本が抱える社会問題を静かに照らし出しているのです。
映像表現・刺激的なシーンの影響
『呪術廻戦0』は、アニメーションとしての映像表現において非常に高い評価を受けています。特に戦闘シーンにおける作画の緻密さ、カメラワークの大胆さ、光と影を使った演出は劇場アニメならではの臨場感を生み出しています。
呪術によるエフェクトや特殊能力の描写も多彩で、視覚的なインパクトは抜群です。さらに、音響面でも迫力のあるサウンドデザインと主題歌・挿入歌が物語の感情を盛り上げ、映像と音のシンクロによる没入感を体験できます。
一方で、暴力的な描写やホラー的な要素も多く含まれています。呪霊のビジュアルはグロテスクで不気味なデザインが多く、特に戦闘シーンでは出血・破壊描写などの刺激的な表現が繰り返されます。
このような描写は、ホラーやバイオレンス表現に慣れていない観客にとって強い不快感や恐怖を与える可能性があるため、事前に心構えをしておくことが望まれます。
とはいえ、これらの刺激的描写は単なる過激さではなく、キャラクターの感情や命の重さ、呪いの本質を伝えるための手段として機能しています。そのため、内容的にも意味のある演出として物語に溶け込んでいます。
全体的に、『呪術廻戦0』の映像表現は“魅せる”ことを徹底した高品質なアニメーションでありながら、視聴者に一定の精神的負荷を伴う可能性がある点には注意が必要です。
関連作品(前作・原作・メディア展開など)
『呪術廻戦0』は、原作漫画『呪術廻戦 0 東京都立呪術高等専門学校』を基にした劇場アニメです。この“0巻”は本編の前日譚にあたり、後にTVアニメ化された本編のエピソードとは別の主人公・乙骨憂太を中心に描かれています。
TVシリーズは2020年に第1期が放送され、TVアニメ第2期「懐玉・玉折/渋谷事変」も2023年に放送されました。『呪術廻戦0』は時系列的にこの第1期よりも前の物語であるため、視聴順としては『呪術廻戦0』→TVシリーズの順で観ることで、物語の深みやキャラクター理解が増す構成となっています。
メディア展開としては、舞台版『呪術廻戦0 WITH LIVE BAND』が2024年に上演され、ライブ演奏と演技の融合が話題となりました。また、スマホゲーム『ファントムパレード』やコンソールゲーム『戦華双乱』、ボードゲーム『呪霊逃走』など、ジャンルを越えた展開が広がっています。
これらの関連作品はいずれも、世界観の拡張やキャラクター理解に役立つものばかりであり、単なるスピンオフではなく本編と地続きの重要な補完コンテンツとしての価値を持っています。
類似作品やジャンルの比較
『呪術廻戦0』は、ダークファンタジー×バトルというジャンルにおいて、近年のアニメ映画の中でも特に完成度の高い作品とされています。類似するジャンルやテーマの作品と比較することで、本作の立ち位置がより明確になります。
『チェンソーマン』は、同じく「週刊少年ジャンプ」発のダークファンタジー作品で、悪魔との契約や戦いを通して人間性を問う構造が共通しています。両作ともに過激なアクションや血なまぐさい描写が多く、キャラクターの葛藤や“心の傷”にフォーカスしている点が似ています。
『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』もまた、ジャンプ系の映画作品として比較されがちです。どちらも高品質なアニメーションと、戦闘に絡めた感情的な物語展開が評価されており、「愛する者を守る」というテーマにも共通点があります。ただし『鬼滅』は家族愛が中心であるのに対し、『呪術廻戦0』は“喪失と再生”という個人の物語にフォーカスしています。
また、観る人によってはアートアニメ作品の『天使のたまご(Angel’s Egg)』を連想することもあります。ビジュアルの暗さや象徴的な構成において、静かで不気味な空気感を共有していますが、『呪術廻戦0』はよりエンタメ要素が強く、バトル重視の作風となっています。
ジャンル的にも、ホラー要素を含むアクションアニメとしては、“刺激的かつ哲学的”なバランスが魅力といえるでしょう。特にジャンプ作品に慣れている人には入りやすく、バトルアニメが好きな方には非常におすすめできるポジションです。
続編情報
『呪術廻戦0』の続編にあたる直接的な劇場作品は現時点では制作されていませんが、物語としてはTVアニメ本編へとつながっており、シリーズ全体の流れの中で「前日譚」としての位置づけを持ちます。
2025年にはTVアニメ第2期の総集編映画『劇場版総集編 呪術廻戦 懐玉・玉折』が公開され、『呪術廻戦0』との時系列が近く、連続して視聴することで物語の深みが増す構成となっています。この作品は2025年5月30日に全国劇場で公開されました。
さらに、続編にあたるTVシリーズ第3期『呪術廻戦 死滅回游』の制作が正式発表されており、放送日は未定ながら、新たな監督体制とスタッフが参加する形で制作が進行中です。原作漫画の同名エピソードを元にした内容となり、本編の大きな転機を描く章として期待されています。
『呪術廻戦0』に登場したキャラクターたちのその後の活躍が描かれるのは主にTVシリーズ側であり、劇場作品としての続編ではなく、アニメ本編を通じての“間接的な続編構成”となっています。
また、今後の劇場版続編について公式発表はされていないものの、原作人気・興行収入の実績を踏まえれば、新作映画化の可能性も十分にあり得ると見られています。
まとめ|本作が投げかける問いと余韻
『呪術廻戦0』は、単なるアクションや呪術バトルを楽しむエンタメ作品という枠を超えて、「愛とは何か」「呪いとは何か」という深いテーマを観る者に問いかけてきます。
乙骨憂太という主人公が、大切な人を失い、絶望とともに歩んだ時間。そして、自分の力に向き合い、他者との関係のなかで成長していく姿は、現実の私たちにも通じる“喪失と再生”の物語です。
彼の行動一つ一つには揺れる感情が込められており、特に最終盤で彼が下す選択には、「本当の意味で誰かを想うとはどういうことか?」という倫理的な問いが込められています。
また、敵として描かれる夏油傑の思想も一面的ではなく、そこには現代社会に通じる葛藤や矛盾が見え隠れしています。そのため本作は、善悪という単純な二元論では語れない奥行きを持った作品でもあります。
視聴後には、「人はなぜ呪うのか?」「祈りや想いは、どこまで他人に届くのか?」という感情が胸に残ります。これらの余韻は、作品を離れてからもふとしたときに思い出される、“静かな問いかけ”として心に残り続けるのです。
アニメーションとしての完成度もさることながら、本作が多くの観客の心を捉えるのは、そうした“感情の輪郭”を丁寧に描いたからに他なりません。バトルアニメとしての爽快感とともに、感情的な深みと余韻が残る、稀有な作品といえるでしょう。
ネタバレ注意!本作の考察(開くと見れます)
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『呪術廻戦0』の物語の根幹にあるのは、「呪い」と「愛」の二重構造です。表面的には呪霊との戦いを描いていますが、乙骨憂太と祈本里香の関係は、呪いと化した愛がどこまで純粋でいられるかという、倫理的かつ哲学的な問いを内包しています。
終盤で明かされる「呪ったのは里香ではなく乙骨自身だった」という真実は、本作における最大の転換点です。これは、愛の形が歪んだとき、それがどのように現実に作用するかを象徴する強烈なメッセージでもあります。
乙骨の行動の根底には、自責の念と生きることへの戸惑いがあり、それを解きほぐすのが“呪術高専”というコミュニティの存在です。彼は他者との関わりの中で、自らの呪いを乗り越えていきますが、これは個人の再生と共同体の意義を示唆しているとも読めます。
また、敵対する夏油傑の思想も重要です。「呪術師以外は不要」という過激な思想の裏には、彼なりの正義や苦しみがあり、五条悟との過去を知る視聴者にとってはより複雑な感情を呼び起こします。この対比構造が、物語に単なる善悪を超えた人間的な深みをもたらしています。
本作のラスト、乙骨が「ありがとう、里香」と言う場面は、呪いの終焉であると同時に、彼が“人を愛すること”を恐れずに受け入れた瞬間です。これは「呪いもまた、深い愛のひとつの形だったのではないか?」という、観る者への静かな問いかけとなって余韻を残します。
ネタバレ注意!猫たちの会話(開くと見れます)
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