映画『ジョン・ウィック:パラベラム』徹底レビュー|スタイリッシュな暴力美と孤高の逃走劇

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目次

『ジョン・ウィック:パラベラム』とは?|どんな映画?

ジョン・ウィック:パラベラム』は、伝説の殺し屋ジョン・ウィックが、全世界の暗殺者から命を狙われる逃亡劇を描いたアクション映画です。

全編を通してスタイリッシュかつ緊張感あふれる戦闘シーンが続き、息をつかせぬガンフー(ガンアクション+カンフー)や接近戦が魅力の本シリーズ。その第3作となる本作では、前作の直後から物語が始まり、追い詰められたウィックの“孤独な戦い”がより激しさを増しています。

重厚でミニマルな美術や静と動を使い分けた演出、独自の殺し屋組織「ハイ・テーブル」の存在によって、単なるアクション映画を超えた“ダークで詩的な異世界感”も漂います。

一言で言えば、「美しき暴力の世界を極めた、孤高の逃亡劇アクション」と言えるでしょう。

基本情報|制作・キャスト/受賞歴・公開情報

タイトル(原題)John Wick: Chapter 3 – Parabellum
タイトル(邦題)ジョン・ウィック:パラベラム
公開年2019年
アメリカ
監 督チャド・スタエルスキ
脚 本デレク・コルスタッド、シェイ・ハッテン、クリス・コリンズ、マーク・エイブラムス
出 演キアヌ・リーブス、ハル・ベリー、ローレンス・フィッシュバーン、イアン・マクシェーン、マーク・ダカスコス
制作会社サンダー・ロード・ピクチャーズ、87Eleven Productions、ライオンズゲート
受賞歴第45回サターン賞(アクション/アドベンチャー映画賞ノミネート)、他

あらすじ(ネタバレなし)

裏社会の掟を破り、ニューヨークのコンチネンタル・ホテルで殺人を犯した伝説の殺し屋ジョン・ウィック。彼は「世界中の殺し屋から命を狙われる」という過酷な状況に追い込まれ、たった一人で逃亡を開始します。

制裁の時は刻一刻と迫り、信じられる味方も限られるなか、ジョンはわずかな希望を頼りに、世界の裏に広がる組織と己の過去に立ち向かっていきます。

果たして彼は生き延びることができるのか? そして、全世界の命を懸けた“ゲーム”の中で、彼が選ぶ決断とは——?

予告編で感じる世界観

※以下はYouTubeによる予告編です。

独自評価・分析

ストーリー

(3.5点)

映像/音楽

(4.5点)

キャラクター/演技

(4.0点)

メッセージ性

(2.5点)

構成/テンポ

(4.0点)

総合評価

(3.7点)

評価理由・背景

『ジョン・ウィック:パラベラム』は、アクション演出と美術・音響の完成度が非常に高く、スタイリッシュな世界観を作り上げている点が高く評価されます。キアヌ・リーブスのストイックな演技やアクションの説得力もシリーズ随一であり、キャラクター面でも満足度は高めです。

一方で、ストーリーは前作からの流れを前提とした展開が多く、単体ではやや説明不足な印象を受ける場面もありました。また、メッセージ性は重視されておらず、アクションに特化した構成のため、人によっては物足りなさを感じるかもしれません。

それでもシリーズファンにとっては十分に期待に応える完成度であり、映画としての娯楽性は申し分ない一作です。

3つの魅力ポイント

1 – 圧倒的な“実戦型アクション”

ガンフーや接近戦などを駆使したアクションはすべて実演を基本とし、キアヌ・リーブス本人が徹底的な訓練を積んで演じています。その結果、スローモーションや過剰な編集に頼らないリアルな肉弾戦が展開され、観客の没入感を極限まで高めています。

2 – 無機質で美しい世界観

本作の舞台は、現実の都市をベースにしながらも、独自のルールと様式美が支配する裏社会。ネオノワール調の色彩や照明、幾何学的な構図が映像全体に美術品のような印象を与え、まるで異世界を旅しているかのような没入体験を提供します。

3 – 極限状態の静かな狂気

ジョン・ウィックのキャラクターは、怒りや悲しみを声高に叫ぶことはありません。むしろ、感情を抑えた静かな佇まいの中に、暴力と孤独を抱えた狂気が垣間見えます。その静謐な狂気こそが、本作の持つ緊張感と奥行きを生み出しています。

主な登場人物と演者の魅力

ジョン・ウィック(キアヌ・リーブス)

シリーズの主人公である伝説の殺し屋ジョン・ウィック。キアヌ・リーブスの寡黙でストイックな佇まいがキャラクターに強烈な説得力を与えています。アクションシーンでは自らスタントをこなし、リアリティと迫力を両立。セリフの少なさの中に滲む孤独と覚悟が、彼の演技を通じて深く伝わってきます。

ソフィア(ハル・ベリー)

モロッコの支部でコンチネンタル・ホテルを仕切る元殺し屋。ジョンの過去を知る数少ない人物のひとりとして、信頼と緊張感を同時に抱える存在です。ハル・ベリーは激しい銃撃戦とドッグアクションを見事にこなし、強く美しい女性像を確立しました。

ゼロ(マーク・ダカスコス)

ジョンを追う暗殺者のひとりで、日本刀を駆使する達人。非情な戦士でありながら、どこかジョンに敬意を抱くような一面も見せる複雑なキャラクターです。マーク・ダカスコスのキレのある殺陣と絶妙なユーモアが、敵役ながら強い印象を残します。

視聴者の声・印象

アクションの完成度が凄すぎて、まばたきする暇がなかった。
ストーリーはやや単調に感じたけど、それを補って余りある映像美。
ハル・ベリーと犬の連携がカッコよすぎる!もっと観たかった。
少し長く感じたし、説明不足な場面もあったかな。
殺し屋の世界観が徹底されていて、シリーズで一番好きかも。

こんな人におすすめ

スピード感あふれるアクション映画が好きな人

マトリックス』『イコライザー』のような戦闘美学に惹かれる人

静かでクールな主人公像に魅力を感じる人

世界観に没入できるスタイリッシュな映像演出を楽しみたい人

セリフより“行動で語る”映画が好みの人

逆に避けたほうがよい人の特徴

激しい暴力描写や血の演出が苦手な人
深い人間ドラマやメッセージ性を重視する人
シリーズ未視聴でストーリーの前提を理解していない人
長尺のアクションシーンに集中力が続かない人
静かな映画や会話劇を好む人

社会的なテーマや背景との関係

『ジョン・ウィック:パラベラム』は一見するとアクションに特化した娯楽映画に思えますが、その根底には現代社会の不条理や管理社会への批判的な視点が垣間見えます。

まず注目すべきは、「ハイ・テーブル」と呼ばれる裏社会の支配構造です。この組織は、世界中の殺し屋を管理・統制する絶対的権力を持ち、ルールを破った者に対しては容赦なく制裁を下します。この構図は、現代の官僚機構や権威主義的な体制、あるいは企業社会における非情な“ルール”や“上層部”の姿を想起させます。

また、ジョン・ウィックという存在は個人の自由意志と生存本能の象徴として描かれています。彼は「引退」しようとしても、それを許さない社会的構造の中で、何度も戦わざるを得なくなります。これは、現代において自分の人生をコントロールしようとしても、しばしば既存の制度や社会の期待によって阻まれる人々の姿と重なります。

さらに印象的なのは、劇中に登場する登場人物たちが、しばしば“選択”ではなく“従属”を強いられる場面です。これは、グローバル化や格差社会のなかで選択の余地を奪われる労働者や個人の立場を象徴しているとも言えるでしょう。

本作が描く暴力や逃走の連続は、単なるエンタメとしてのカタルシスに留まらず、「規範に縛られた社会で人はどう生きるか」という問いを観客に投げかけているのかもしれません。

映像表現・刺激的なシーンの影響

『ジョン・ウィック:パラベラム』の映像は、単なるアクション映画にとどまらずネオノワール的な美術性を備えたスタイリッシュな演出が特徴です。冷たい色調の照明、ガラス張りの空間、幾何学的な構図など、視覚的に印象的なシーンが多数登場し、まるで“動く写真集”のような美しさがあります。

音響面でも、銃声や肉体のぶつかり合い、足音といったリアルな効果音が緻密に設計されており、緊張感を演出する上で非常に効果的です。BGMはあくまで場面を支える存在として機能し、過剰な音楽演出は排除されています。

一方で、本作には非常に多くの暴力描写が含まれています。銃撃、近接戦闘、ナイフによる流血、犬による襲撃など、戦闘シーンはリアルかつ過激であり、人によっては不快に感じる可能性があります。性的な描写はほぼ存在しませんが、全編を通して肉体的暴力に対する耐性が求められる作品と言えるでしょう。

視聴にあたっては、「激しいアクション=痛みを伴う表現」として描かれていることを前提に構えておくとよいかもしれません。特に、暴力描写に対して敏感な方は、注意が必要です。

ただし、その暴力性の中にも、ジョンの孤独や美学が込められており、単なる残酷さやショック演出とは異なる“詩的なバイオレンス”として描かれている点が本作の大きな特徴です。

関連作品(前作・原作・メディア展開など)

『ジョン・ウィック:パラベラム』は、2014年にスタートした『ジョン・ウィック』シリーズの第3作目にあたります。以下はシリーズの公開順と簡単な特徴です:

  • ジョン・ウィック』(2014年):妻に先立たれ孤独に生きる男ジョン・ウィックが、愛犬を殺されたことで裏社会に復帰する。シリーズの原点。
  • ジョン・ウィック:チャプター2』(2017年):過去の血の契約に縛られたジョンが再び裏社会の抗争に巻き込まれていく。
  • 『ジョン・ウィック:パラベラム』(2019年):前作直後から物語が続き、“全世界の殺し屋から命を狙われる”逃亡劇が描かれる。

このシリーズは原作のない完全オリジナル脚本で展開されており、コミックや小説をベースにしたものではありません。しかし、スピンオフや拡張メディアも存在し、シリーズ独自の世界観が広がり続けています。

視聴順としては、基本的に公開順に観るのが最もおすすめです。物語が連続性を持って進行するため、途中から視聴するとキャラクター関係や背景が理解しづらくなる可能性があります。

また、スピンオフとしてホテル「コンチネンタル」を舞台にしたTVシリーズや、女性アサシンを主人公とした『バレリーナ』などの企画も進行中であり、今後さらに世界観の広がりが期待されています。

類似作品やジャンルの比較

『ジョン・ウィック:パラベラム』が属するスタイリッシュ・アクション映画というジャンルには、同じく緻密なアクション演出や孤高の主人公を描いた作品が多く存在します。以下に、世界観や演出、テーマの近い類似作品をいくつか紹介します。

  • イコライザー』シリーズ(主演:デンゼル・ワシントン)
    こちらも元殺し屋が静かに正義を貫く姿を描いており、静と動のバランス冷徹なプロフェッショナルの美学が共通しています。ジョン・ウィックよりややドラマ寄り。
  • アトミック・ブロンド』(主演:シャーリーズ・セロン)
    女性スパイを主人公にした作品で、冷戦下のベルリンを舞台にしたアクションとスタイル重視の演出が魅力。ガンフー的な肉弾戦や鮮やかな映像美など、本作との共通点が多数。
  • 『メカニック:ワールドミッション』(主演:ジェイソン・ステイサム)
    スナイパーやステルス要素を含んだ暗殺アクション。ジョン・ウィックよりもミッション要素が強く、計画性と効率性に重きを置いたスタイルが特徴です。
  • 『ザ・レイド』シリーズ(インドネシア)
    ガンアクションではなく肉弾戦が主体の超ハードアクション。閉鎖空間のなかで繰り広げられる格闘描写の迫力は本作以上とも言われ、“リアルさ”の極地としてファンが多い作品。

これらの作品はいずれも、アクションの美学や主人公の孤独を軸に物語が展開される点で共通しています。『ジョン・ウィック』の世界観に惹かれた人なら、きっと楽しめることでしょう。

続編情報

『ジョン・ウィック:パラベラム』の続編展開は非常に活発で、シリーズの世界観を広げるさまざまな企画が進行中です。

1. 続編の有無
本作の後、シリーズ第4作『ジョン・ウィック:コンセクエンス』が2023年に公開されており、さらに第5作の制作も正式発表されています。また、複数のスピンオフ作品やTVシリーズも進行中です。

2. 続編のタイトル・公開時期
第5作は仮題『ジョン・ウィック:チャプター5』として準備されており、2025年以降の公開が予定されています。2025年4月のCinemaConにて、ライオンズゲート社が開発中であることを公式に発表しました。

3. 制作体制
第5作では引き続きチャド・スタエルスキ監督キアヌ・リーブス主演が続投予定で、シリーズの精神を受け継ぐ体制が維持されています。プロデューサー陣や製作会社も従来通り87Eleven Productionsなどが中心となる見込みです。

4. スピンオフ/プリクエルなど
現在、複数のスピンオフプロジェクトが進行中です。代表的なものには以下があります:

  • 『バレリーナ』(主演:アナ・デ・アルマス):女性アサシンの復讐劇を描いたスピンオフ映画で、2025年6月に全米公開、同年8月に日本公開予定。
  • 『ジョン・ウィック:アンダー・ザ・ハイテーブル』:ジョンの死後の世界を描くとされるドラマシリーズで、TV向けに企画進行中。
  • 『ケイン(仮)』:ドニー・イェン演じるキャラクターを主人公とする映画が本人主演・監督で企画中。
  • アニメーション前日譚プロジェクト:ジョン・ウィックの過去を描くアニメ企画も水面下で進行していると報じられています。
  • ドキュメンタリー映画『Wick Is Pain』:シリーズの制作背景に迫る作品で、2025年に限定公開されました。

このように、本シリーズは単なる続編展開にとどまらず、ユニバース化された世界観として拡大を続けています。ジョン・ウィックというキャラクターを中心に、さまざまな物語が今後も展開されていくでしょう。

まとめ|本作が投げかける問いと余韻

『ジョン・ウィック:パラベラム』は、アクション映画というジャンルの枠を超え、美学・哲学・社会構造といった深層的なテーマにも踏み込んだ一作です。圧倒的な戦闘演出と視覚美によって観る者を魅了しながら、その裏で「人はどこまで孤独に耐えうるのか」「ルールに縛られた社会で自由とは何か」といった、観客の心に静かに問いを投げかけます。

ジョン・ウィックという男は、復讐や生存のためだけに戦っているのではなく、過去と訣別しようともがく存在です。その姿は、現代に生きる私たちにも通じる“自由を求める意志”の象徴ともいえます。誰しもが何らかの役割や社会的立場に縛られながら、それでも“自分自身であること”を貫こうとする。その苦悩と葛藤が、無言の銃声や静かな眼差しの中に込められているのです。

また、今作が描く世界観の魅力は、単にアクションの爽快さではありません。整然とした暴力、沈黙の重み、そして命を奪う瞬間にすら宿る詩情。こうした演出の積み重ねが、観る者に「暴力とは何か」「生き延びるとはどういうことか」という根源的なテーマを突きつけてきます。

そして観終えたあと、観客の心に残るのは、決して派手な銃撃戦の記憶だけではないでしょう。むしろ、傷だらけのジョン・ウィックが歩き続けるその後ろ姿に、誰にも語れない痛みと、それでも歩み続けようとする人間の強さを感じずにはいられません。

本作は、「アクション映画とはこうあるべき」という概念に疑問を投げかけ、観る者に“静かな衝撃”と“深い余韻”を与える傑作と言えるでしょう。

ネタバレ注意!本作の考察(開くと見れます)

OPEN

『ジョン・ウィック:パラベラム』の考察ポイントのひとつは、「ジョン自身が何と戦っているのか」という内面的な葛藤の構造にあります。

物語上では、ジョンは裏社会のルールに背き「追放」されたことで、世界中の暗殺者に狙われる立場になります。しかし、その逃走劇の中で見えてくるのは、ただの生存戦略ではなく、「自分という存在の意味」を探す旅でもあります。

特に注目すべきは、ジョンが“上位の存在”である「ハイ・テーブル」と直接的に対峙しようとする点です。これは、現代社会において個人が制度や権力とどう向き合うかというメタファーにも読み取ることができます。彼が選択する行動の一つ一つは、社会的服従と個人の意志の間で揺れる“自己の在り方”に対する問いそのものです。

また、ソフィアとの再会や、かつての仲間との関係性も印象的です。彼女が「娘には関わらないで」と言い放つ場面は、ジョンが“過去を引きずる者”であることを象徴しており、彼の戦いが物理的なものだけでなく精神的な贖罪の旅であることを示しています。

さらに、終盤においてジョンがウィンストンに裏切られるシーンは、信頼・利用・政治的駆け引きといったテーマの凝縮です。一見冷酷な裏切りですが、それ自体がジョンを生かすための計算された選択だったのではという解釈も可能です。

本作の最大の謎は、「ジョンは本当に生き延びたいのか?」という根本的な問いかもしれません。彼の戦いは、生きるためというよりも、“死ぬまでに何かを成し遂げようとする衝動”のように描かれており、そこには孤独な人間の本質が投影されているように感じられます。

このように『パラベラム』は、単なるガンアクションを超え、生と死、忠誠と裏切り、自由と拘束といった多層的なテーマが潜んだ深い物語として読み解くことができます。

ネタバレ注意!猫たちの会話(開くと見れます)

OPEN
君、あの場面覚えてる?ジョンが撃たれて落ちた時…僕、心臓止まるかと思ったよ…
あのあと地下で生きてたんだよな?あのタフさ、ちょっとおやつ何個分だと思う?
それにしても、ウィンストンの裏切りって本心だったのかな…。僕だったら泣いちゃう…
いやあれは生かすための芝居って説もあるらしいよ。ツンデレの極みだよ、あれは。
ソフィアと再会したときも複雑な気持ちだったけど、あの犬たちとの連携プレイには震えたよ…。
うん、僕もあの犬たちに混じって突撃したいと思った…っていうか僕も噛みつけるよ。たぶん。
いや、君のは“甘噛み”だから戦力にならないってば。
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