映画『ジョン・ウィック:チャプター2』徹底レビュー|美学としてのアクションと裏社会の掟

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目次

『ジョン・ウィック:チャプター2』とは?|どんな映画?

ジョン・ウィック:チャプター2』は、伝説の殺し屋ジョン・ウィックが再び裏社会に身を投じる、スタイリッシュで重厚なガン・アクション映画です。

愛する妻を亡くし、静かな余生を望んでいたジョン。しかし、過去の誓約により逃れられない運命に引き戻され、壮絶な戦いの渦中へと身を投じていきます。

一言で言うならば、「美しくも過酷な復讐の美学を極めた“殺し屋バレエ”」。前作以上に洗練されたアクション演出と、裏社会の荘厳で儀式的な世界観が印象的です。

アクション映画ファンはもちろん、無駄を削ぎ落とした美学に惹かれる人にも強く響く作品です。

基本情報|制作・キャスト/受賞歴・公開情報

タイトル(原題)John Wick: Chapter 2
タイトル(邦題)ジョン・ウィック:チャプター2
公開年2017年
アメリカ
監 督チャド・スタエルスキ
脚 本デレク・コルスタッド
出 演キアヌ・リーブス、コモン、ローレンス・フィッシュバーン、ルビー・ローズ、イアン・マクシェーン
制作会社サミット・エンターテインメント、87Eleven Productions
受賞歴2017年 ゴールデントレーラー賞 Best Action 受賞

あらすじ(ネタバレなし)

裏社会から足を洗い、亡き妻との静かな思い出とともに生きていた伝説の殺し屋ジョン・ウィック。だが、過去に交わした“血の誓約”が再び彼を地獄の舞台へと引き戻す。

イタリアン・マフィアの依頼を断り切れず、ローマへと向かったジョン。そこには、壮大で冷酷な陰謀が待ち受けていた。

「逃れられない運命」と「裏切りの連鎖」が絡み合う中、ジョンは再び圧倒的な戦闘力を武器に、己の信念を貫くために動き出す。

果たして彼は、この危険な任務の中で何を守り、何を失うのか――。

予告編で感じる世界観

※以下はYouTubeによる予告編です。

独自評価・分析

ストーリー

(3.5点)

映像/音楽

(4.5点)

キャラクター/演技

(4.0点)

メッセージ性

(3.0点)

構成/テンポ

(4.0点)

総合評価

(3.8点)

評価理由・背景

本作の魅力は何と言っても、銃撃と格闘を融合させた“ガン・フー”のスタイリッシュな映像表現にあります。前作以上に緻密で大胆なアクションシーンは、映像・音楽面で極めて高く評価できる一方、物語自体はシンプルで展開の読める構造になっており、ストーリー面ではやや抑えめの評価としました。キアヌ・リーブスをはじめとしたキャスト陣の説得力ある演技は作品世界を強固に支えており、テンポよく進む構成とのバランスも良好です。ただし、深いメッセージ性を期待する作品ではなく、あくまでビジュアル重視のエンタメ作として評価するのが適切です。

3つの魅力ポイント

1 – 美学としての“ガン・フー”アクション

本作最大の魅力は、銃撃と肉弾戦を融合させた“ガン・フー”と呼ばれる独自のアクションスタイルです。実際の訓練を積んだキアヌ・リーブスの動きは圧巻で、スローモーションやカメラワークに頼らず、一連の動作を一つの美しい振付のように見せる映像はまさに“アクションの美学”といえる仕上がりです。

2 – 儀式的な裏社会の世界観

“コンチネンタル・ホテル”に象徴されるように、裏社会には独自の掟とルールがあり、それが現実と地続きでありながらファンタジックに描かれています。殺し屋たちの振る舞いや言葉の交わし方には、どこか儀式的な美しさがあり、ただのバイオレンス映画ではない深みを与えています。

3 – 寡黙な男の美学と感情の奥行き

ジョン・ウィックという人物の魅力は、感情を言葉にせず行動で示すその姿勢にあります。愛する者を失った悲しみ、復讐に駆られる孤独、それでも自らのルールに従う誠実さ。そうした複雑な感情が多くを語らずとも伝わってくる演出は、アクションの合間に静かに心を打ちます。

主な登場人物と演者の魅力

ジョン・ウィック(キアヌ・リーブス)

かつて“伝説”と呼ばれた殺し屋。前作に続き、本作でも愛する者を失った男の静かな怒りと誇りを体現しています。キアヌ・リーブスは台詞よりも立ち居振る舞いでキャラクターの本質を表現し、その沈黙と行動に重みを与えています。リアルな射撃訓練を積んだ彼の動きは圧巻で、ジョンというキャラクターに現実味と神話性を同時に与えている点が魅力です。

カシアン(コモン)

マフィアのボディーガードであり殺し屋。ジョンと似た信念を持ち、敵対しながらも互いを認め合うライバル関係にあります。演じるコモンは音楽アーティストとして知られる一方で、本作ではプロフェッショナルな殺し屋としての存在感を発揮。静かで理性的ながらも内に熱を秘めた演技が印象的です。

ウィンストン(イアン・マクシェーン)

コンチネンタル・ホテルの支配人であり、裏社会の秩序を守るキーパーソン。ジョンとの関係は友好と規律の狭間にあり、場面ごとに微妙な距離感を保ちます。イアン・マクシェーンの重厚な声と落ち着いた佇まいが、作品に知的でクラシカルな雰囲気を加える要素となっています。

視聴者の声・印象

アクションの密度がすごい!呼吸する暇もなかった。
話の流れが単調に感じた。前作の方が好み。
キアヌ・リーブスの動きがリアルすぎて震えた。
スタイリッシュだけど、人によっては暴力描写がキツいかも。
裏社会のルール設定が独特で面白い!続きが気になる。

こんな人におすすめ

とにかくスタイリッシュなアクション映画が好きな人

無駄を削ぎ落とした寡黙なヒーロー像に惹かれる人

裏社会の美学やルールといったディテールを楽しみたい人

派手さよりもリアルな戦闘描写を重視する人

ジョン・ウィック』や『ジョン・ウィック:パラベラム』など、同シリーズ作品を楽しめた人

逆に避けたほうがよい人の特徴

過度に複雑なストーリー展開や意外性を求める人には物足りないかもしれません。
セリフや心理描写を重視するタイプのドラマ好きな人には、キャラクターの感情表現が乏しく感じる可能性があります。
リアルな暴力描写に抵抗がある人には刺激が強く、ストレスを感じる場面も。
前作未視聴のまま観ると、人物関係や設定に戸惑う可能性が高いです。
“アクションがあれば何でもOK”という人以外は、多少好みが分かれるかもしれません。

社会的なテーマや背景との関係

『ジョン・ウィック:チャプター2』は一見すると単なるアクション映画に見えるかもしれませんが、その背景には「秩序と無秩序」「契約と裏切り」「組織と個人」といった、現代社会に通じるテーマが隠されています。

物語に登場する“裏社会”は、単なる犯罪者たちのネットワークではなく、厳格なルールと儀式、誓約によって成立したもう一つの「社会」として描かれています。この構造は、現代の企業社会や国際的な政治ネットワークにも通じる部分があり、表面的には整然としていても、その内側では暴力や圧力が支配しているという皮肉な現実を比喩的に映し出しています。

特に注目すべきは、ジョン・ウィックが過去の誓約に縛られ、個人の自由を奪われていく姿です。これは現実世界での「終わらない仕事」「義務感に縛られる生き方」にも通じるものであり、観客にとってはどこか他人事ではない共感を呼び起こします。

また、作中で描かれる“血の誓印”や“掟に従う義務”といった制度は、伝統や契約に縛られる社会構造そのものへの風刺とも解釈できます。自由な選択のはずが、実は常に「過去の選択」によって制限されているという構図は、現代の働き方、組織の論理、あるいは個人の人生設計にまで通じる問いを投げかけています。

暴力という極端な形で描かれるこの世界観は、観客に刺激と興奮を提供しつつも、その裏にある「現代社会のしがらみ」や「自由と責任の葛藤」をじんわりと浮かび上がらせるのです。

映像表現・刺激的なシーンの影響

『ジョン・ウィック:チャプター2』は、その映像表現において極めて高い完成度を誇る作品です。とりわけ、「美学としての暴力表現」というジャンルにおいて、世界的に高い評価を受けています。

本作では、暗闇の中に浮かび上がるネオンの色彩、静謐な空間に響く銃声、クラシック音楽のように緻密に計算されたアクションシーンなど、映像と音響のシンクロが圧倒的な没入感を生み出しています。どのカットも構図やライティングにこだわりが感じられ、アクション映画でありながら“視覚芸術”としての側面も持ち合わせているのが特徴です。

ただし、その映像の美しさと裏腹に、描かれる内容は非常に暴力的です。銃撃、刺突、近接戦闘などが頻繁に登場し、リアルさを重視した生々しい描写が多く含まれています。あくまでスタイリッシュに演出されていますが、流血や即死に至る表現もあり、視聴者によっては不快やショックを感じる可能性もあります。

性的描写は抑えめで、ホラー的要素もほとんどありませんが、暴力表現の激しさという点では明確に「注意が必要」なレベルです。特に小さなお子様や過激な描写に慣れていない方が視聴する場合は、心構えを持っておいた方が良いでしょう。

一方で、これらの刺激的なシーンが物語の核心やキャラクターの背景と密接に結びついており、単なるショック演出にとどまらない点は評価すべきポイントです。ジョン・ウィックというキャラクターの内面や、彼が背負う世界の過酷さを描く上で、この暴力性は不可欠な要素として機能しています。

関連作品(前作・原作・メディア展開など)

『ジョン・ウィック:チャプター2』は、シリーズ2作目にあたる作品であり、世界観や人物関係をより深く楽しむには前作の視聴が推奨されます。

シリーズの第1作である『ジョン・ウィック』では、主人公ジョンが再び裏社会へ足を踏み入れるきっかけとなる事件が描かれており、彼の内面や過去の因縁が浮き彫りになります。この背景を知っていることで、『チャプター2』における行動や選択により深い理解と感情移入が可能になります。

また、続く第3作『ジョン・ウィック:パラベラム』へと物語が直接つながるため、本作を中核として前後の展開が一本の大きな物語として構成されています。観る順番としては公開順が最適です。

スピンオフ作品としては、ジョン・ウィックの世界観を拡張するTVドラマ『ザ・コンチネンタル:ジョン・ウィックの世界から』が存在し、過去の時代背景や重要キャラクターの若き日々を描いています。本編とは異なる視点で世界を掘り下げるコンテンツとして位置づけられています。

なお、シリーズは完全なオリジナル脚本によって展開されており、漫画や小説といった原作は存在しません。映像作品としての独自性が強く、シリーズ全体で統一された美学とルールの世界が展開されています。

類似作品やジャンルの比較

『ジョン・ウィック:チャプター2』のようなスタイリッシュで緻密なアクションを楽しめた方には、以下のような作品もおすすめです。いずれもハードな戦闘描写やキャラクターの美学、リアリズムを重視しており、共通する魅力を持っています。

アトミック・ブロンドは本作と同じ監督(デヴィッド・リーチ)による作品で、冷戦下のベルリンを舞台にしたスパイアクション。シャーリーズ・セロンが体当たりのアクションを見せ、ジョン・ウィックの“ガン・フー”に通じるリアルで肉体的な戦闘が展開されます。

イコライザーは、孤独な元工作員が社会の闇に制裁を加えるという構図がジョン・ウィックと類似。ストーリー展開はより重厚ですが、冷静で圧倒的な戦闘力という点で共通しています。

『Mr. Nobody』は、平凡な男が実は凄腕の元殺し屋だったという設定で、制作陣にジョン・ウィックと同じスタッフが参加しています。コミカルな要素もありながら、アクションシーンの質は非常に高く、バランス感に優れた作品です。

さらに、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のようなビジュアルの強度とアクションの連続性に特化した作品も、ジョン・ウィックシリーズと近しい興奮を提供してくれるでしょう。

一方で、ジャッキー・チェンの旧作などに見られるワイドショット中心の格闘描写や、振付の“見せる美しさ”を重視したスタイルは、ジョン・ウィックの“リアルで無駄のない美学”とは異なる方向性ではありますが、アクション表現の多様性を知る上で対比的に楽しめるはずです。

続編情報

『ジョン・ウィック:チャプター2』には、その後の物語を描いた複数の続編・スピンオフが存在します。以下に、現時点で確認されている関連情報を紹介します。

1. 続編の有無と公開状況
本作の直接的な続編にあたるのが『ジョン・ウィック:パラベラム』(2019年)と『ジョン・ウィック:コンセクエンス』(2023年)です。両作は公開済みで、物語は『チャプター2』の直後から継続されています。

2. 今後の新作タイトルと公開時期
シリーズのさらなる続編として、『ジョン・ウィック:チャプター5』が2025年公開に向けて開発中と報道されています。正式な公開日は未定ですが、主要キャストであるキアヌ・リーブスの続投が示唆されています。

3. 制作体制(監督・キャスト)
『チャプター3』と『チャプター4』はチャド・スタエルスキが引き続き監督を務め、ビジュアル面とアクション演出においてシリーズの一貫性が保たれています。キアヌ・リーブスも全作にわたり主演を続けており、彼の存在がシリーズの軸であることに変わりはありません。

4. プリクエル・スピンオフなどの展開
スピンオフとしては、暗殺者イブを主人公とする映画『Ballerina』が2025年公開予定です。『チャプター3』と『チャプター4』の間を描く作品で、アナ・デ・アルマスが主演を務めます。また、1970年代のコンチネンタル・ホテルを舞台としたドラマ『ザ・コンチネンタル:ジョン・ウィックの世界から』もすでに配信されており、シリーズの世界観を補完する作品となっています。

まとめ|本作が投げかける問いと余韻

『ジョン・ウィック:チャプター2』は、単なるアクション映画の枠を超えた「沈黙と暴力の哲学」とも言える作品です。派手な銃撃戦や格闘シーンの裏側には、己の信念や過去に対する贖罪、そして誇りある生き方とは何かというテーマが隠されています。

ジョン・ウィックという人物は、決して感情を露わにすることはありません。しかしその背中からは、深い哀しみや迷い、そして決意が確かに伝わってきます。彼の姿は、現代に生きる私たちにも共通する「選択の重さ」や「人間関係のしがらみ」を象徴しているかのようです。

“血の誓印”という制度により、過去の約束が現在の自分を縛る。これは組織社会や家族関係、キャリアの中で誰もが経験し得るテーマであり、フィクションでありながらリアルな問いを投げかけてきます。「本当に自分の意志で動いているのか?」という根源的な問いが、観る者の心に静かに降りてくるのです。

シリーズ作品としての中継点でありながら、本作はジョン・ウィックの人物像をより深く掘り下げ、裏社会の秩序と混沌をさらに色濃く描き出しました。戦いの理由が個人的な復讐から、より大きな構造への抵抗へと変化していく過程は、今後の展開への期待を高めつつ、視聴後にもじわじわと残る余韻を生み出します。

観終えた後に残るのは、疾走感のあるアクションの爽快さだけではなく、「誇り高く生きるとはどういうことか」「何を守るために戦うのか」という、静かながらも確かな問いかけです。

ネタバレ注意!本作の考察(開くと見れます)

OPEN

『ジョン・ウィック:チャプター2』における最大の転機は、ジョンが“血の誓印”を破棄し、コンチネンタル内でサンティーノを殺害した場面にあります。これは単なる衝動的な復讐ではなく、ジョン自身が裏社会のルールから自らを解放しようとした「反逆」の行為と解釈できます。

コンチネンタルという場所は「殺しを禁じられた聖域」として機能しており、あの場での殺害は本来絶対にあり得ない行為です。にもかかわらずジョンはそれを破った。これは彼が、これまで忠実に従ってきた「掟」や「社会構造」から脱却する象徴的な一歩であり、“自分の人生を自分で取り戻す”というメッセージが込められているようにも思えます。

さらに、サンティーノとの関係は、かつてジョンが引退するために依頼した仕事の代償という「過去のツケ」によって成り立っており、それが連鎖的に現在へと影響を及ぼす構造になっています。これは「過去の選択が現在を縛る」という、シリーズ全体に通底する主題でもあります。

また、終盤の展開でジョンが“追放”され、あらゆる人間に命を狙われる状況へと突入していく流れは、英雄譚における「追放された者の再起」の物語としても読めます。あえて孤独を選び、世界全体を敵に回してでも自身の道を進む姿には、神話的な重みすら感じられます。

本作は単なるアクションの連続ではなく、「自由と支配」「忠誠と裏切り」といった二項対立を内包した作品であり、その意味においてもジョン・ウィックの選択には観る者の価値観を揺さぶる余地があるのです。

ネタバレ注意!猫たちの会話(開くと見れます)

OPEN
君…見た?あのコンチネンタルでの一発。もう心臓止まるかと思ったよ。
あれ最高だったね。あそこで撃っちゃう?って声出そうになったもん。
でもあの瞬間、ジョンは全部捨てる覚悟してたんだと思う。怖いけど…ちょっとかっこよかった。
しかもそのあと街中で全員から狙われる展開、まるで“リアル鬼ごっこ”じゃん。燃える~。
もう逃げ場なんてどこにもないし…これからどうなっちゃうの…。
とりあえず僕なら、コンチネンタルの屋上に非常食隠して生き延びる戦略かな。
君はまず誓印の使い方を間違えないことから始めようか。
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