『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』とは?|どんな映画?
『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』は、スティーブン・キングの長編小説『IT』を原作とするホラー映画で、2017年公開の『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』の続編かつ完結編です。
前作で描かれた子ども時代から27年後、再び不気味な存在“ペニーワイズ”が姿を現し、成長したルーザーズ・クラブのメンバーたちが恐怖と対峙する様子を描きます。ジャンルとしてはサスペンス要素を伴うホラーであり、仲間同士の絆やトラウマとの対決といった人間ドラマも織り交ぜられています。
一言で言えば、「恐怖の源泉に立ち向かう、大人になった子どもたちの最終決戦」を描いたスリリングで感情的なクライマックス作品です。
基本情報|制作・キャスト/受賞歴・公開情報
タイトル(原題) | It Chapter Two |
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タイトル(邦題) | IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。 |
公開年 | 2019年 |
国 | アメリカ |
監 督 | アンディ・ムスキエティ |
脚 本 | ゲイリー・ドーベルマン |
出 演 | ジェームズ・マカヴォイ、ジェシカ・チャステイン、ビル・ヘイダー、ビル・スカルスガルド |
制作会社 | ニュー・ライン・シネマ、ヴァーティゴ・エンターテインメント、ライドバック |
受賞歴 | サターン賞(ホラー映画賞)ノミネート ほか |
あらすじ(ネタバレなし)
舞台は、かつて『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』で悪夢のような存在と対峙した小さな町デリー。27年の時を経て、大人になったルーザーズ・クラブの面々は、それぞれ別々の人生を歩んでいました。
しかし、再び町で不可解な失踪事件が発生し、過去の恐怖がよみがえります。唯一デリーに残っていたマイクからの緊急の呼びかけにより、仲間たちは再集結を決意します。
再会の喜びも束の間、彼らの前に立ちはだかるのは、あの不気味なピエロ“ペニーワイズ”の影。果たして彼らは再び立ち向かう勇気を持てるのか? 物語は、静かに、しかし確実に恐怖の渦へと引き込んでいきます。
予告編で感じる世界観
※以下はYouTubeによる予告編です。
独自評価・分析
ストーリー
(3.5点)
映像/音楽
(4.0点)
キャラクター/演技
(4.0点)
メッセージ性
(3.5点)
構成/テンポ
(3.0点)
総合評価
(3.6点)
本作は、27年ぶりに再集結したルーザーズ・クラブとペニーワイズの最終決戦を描き、スティーブン・キング原作の持つ壮大な恐怖譚をしっかりと締めくくっています。ストーリーは原作の大筋を踏襲しつつも、上映時間の長さや過去・現在の行き来がやや冗長に感じられたため、評価は3.5点としました。
映像面では恐怖演出や特殊メイク、CGの完成度が高く、音楽も緊張感を持続させる役割を果たしています。特にペニーワイズの存在感は圧倒的で、キャスト陣の演技も全体的に安定感がありました。
メッセージ性については、恐怖の正体を暴き立ち向かう勇気や仲間との絆がテーマとして描かれていますが、恐怖演出の派手さがメッセージの深掘りをやや薄めた印象があります。構成・テンポ面では、後半の展開が長く感じられる箇所があり、3.0点にとどまりました。
3つの魅力ポイント
- 1 – 恐怖とスケール感の融合
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前作を超える規模で描かれるペニーワイズとの最終決戦は、ホラー映画でありながらファンタジー的なスケール感も併せ持っています。地下下水道や異形の空間など、想像を超える舞台装置が視覚的にも強烈な印象を与えます。
- 2 – キャスト陣の再現度と演技力
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大人になったルーザーズ・クラブを演じるキャストが、前作の子役たちの雰囲気や特徴を見事に引き継いでいます。特にビル・ヘイダーのコミカルかつ感情豊かな演技は、緊迫感の中に自然な緩和をもたらしています。
- 3 – 恐怖の正体に迫る物語構造
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ただ怖がらせるだけではなく、“それ”の起源やデリーの町に潜む歴史的背景を掘り下げることで、物語に厚みを加えています。恐怖の裏側に潜むテーマが浮かび上がり、単なるモンスター映画に留まらない深みを感じさせます。
主な登場人物と演者の魅力
- ビル・デンブロウ(ジェームズ・マカヴォイ)
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幼少期に弟を失った過去を背負いながらも、仲間たちを引っ張るリーダー的存在。ジェームズ・マカヴォイは内面の葛藤や決意を繊細に演じ、観客に強い共感を呼び起こします。特に感情の爆発するシーンでの演技は圧巻です。
- ビバリー・マーシュ(ジェシカ・チャステイン)
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かつて虐待を受けた少女から、自立した女性へと成長したビバリー。ジェシカ・チャステインは、その力強さと脆さを同時に表現し、観客の心に深い印象を残します。仲間との再会シーンでは、長年の友情と愛情が滲み出ています。
- リッチー・トージア(ビル・ヘイダー)
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お調子者で皮肉屋だが、内には深い孤独を抱えるキャラクター。ビル・ヘイダーはコメディセンスを活かしつつも、ドラマティックな場面では鋭い感情表現を見せ、作品に人間味と軽妙さを与えています。
- ペニーワイズ(ビル・スカルスガルド)
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恐怖の象徴として再び現れる不気味なピエロ。ビル・スカルスガルドは、奇怪な表情や動きで観客を圧倒し、視覚的にも心理的にも強烈なインパクトを与えます。特有の笑みと予測不能な動きが、観る者を底知れぬ恐怖へと誘います。
視聴者の声・印象













こんな人におすすめ
逆に避けたほうがよい人の特徴
過度なグロテスク描写やジャンプスケアが苦手な人
上映時間が長い作品に集中しづらい人
純粋なスプラッターホラーを期待している人
人間ドラマや心理描写にあまり興味がない人
前作を観ていないため背景や関係性が分からない人
社会的なテーマや背景との関係
『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』は、単なるホラー映画としての恐怖演出だけでなく、現実社会に存在するさまざまなテーマを内包しています。物語に登場する“それ”は、未知の恐怖や外部からの脅威を象徴するだけでなく、人々の内面に潜むトラウマや抑圧された感情を具現化した存在として描かれています。
特に、大人になってからも解消されない幼少期の心の傷や、長年見て見ぬふりをしてきた問題に向き合うことの重要性は、現実社会にも通じる普遍的なテーマです。ルーザーズ・クラブの面々が過去を直視し、恐怖に立ち向かう姿は、虐待やいじめ、差別といった社会問題に向き合う人々のメタファーとしても捉えられます。
また、舞台となるデリーの町は、共同体の沈黙や無関心を表す象徴的な存在です。町全体が事件や失踪に慣れ、無言で見過ごしてしまう構図は、現実における地域社会や組織においても見られる現象であり、これが恐怖を助長させる要因となっています。
さらに、作品には仲間との絆や相互扶助の価値が強く描かれており、恐怖に立ち向かうには個人の勇気だけでなく、集団の支えが必要であることを示しています。これは、災害や社会的不安が高まる現代において、コミュニティの力がいかに重要かを訴えるメッセージとも言えるでしょう。
映像表現・刺激的なシーンの影響
『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』は、恐怖演出と映像美を高いレベルで融合させた作品です。暗い下水道や廃墟の質感、光と影のコントラストを駆使したライティングなど、視覚的な没入感が非常に強く、観客を物語の中心へと引き込みます。CGと実写の融合も自然で、現実と幻想の境界が曖昧になるような演出が随所に見られます。
音響面では、不協和音や突発的な効果音が効果的に使用され、観客の緊張感を持続させます。静寂から一気に音が爆発する瞬間は、予測不能な恐怖感を生み出し、心拍数を上げる仕掛けとして機能しています。
刺激的な描写としては、ホラー映画特有のジャンプスケアや不気味な造形のクリーチャー、そして血液表現が含まれます。ただし過剰な残虐描写ではなく、心理的な不安を煽る方向性が強く、恐怖の余韻を残すタイプの演出が中心です。グロテスクな映像に抵抗のある人は注意が必要ですが、作品全体としてはエンターテインメント性とのバランスを保っています。
また、物語のクライマックスでは映像的スケールが一気に拡大し、巨大な空間描写や異世界的な演出が観客に圧倒的な迫力を与えます。これらは単なる驚かせ要素にとどまらず、キャラクターたちの精神的成長や恐怖克服の象徴としても機能しており、映像表現とテーマ性がしっかりと結びついています。
関連作品(前作・原作・メディア展開など)
本作は、スティーブン・キングの小説『IT』を原作とした二部作映画の後編にあたります。前作『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』では、子ども時代のルーザーズ・クラブと“それ”との最初の対決が描かれ、本作ではその27年後の物語が展開されます。鑑賞順としては前作を観てから本作に進むことで、キャラクターの成長や因縁の深さをより理解できるでしょう。
原作小説『IT』は1986年に刊行され、過去と現在を行き来しながら進む複層的な物語構造が特徴です。映画版は二部構成に再構築され、原作の膨大なエピソードを整理しつつ映像化しています。原作にしか描かれない細部や背景も多いため、映画を楽しんだ後に小説を読むことで新たな発見が得られます。
また、1990年にはテレビミニシリーズ版『IT』が制作され、ティム・カリーがペニーワイズを演じたことで高い評価を受けました。リメイク版との比較を行うことで、時代ごとの演出や映像表現の変化を感じ取ることができます。
メディア展開としては、映画やドラマ以外のコミック化・ゲーム化などは目立っていませんが、ペニーワイズというキャラクターはポップカルチャーにおいて広く認知され、コスプレやファンアート、グッズなど多方面での人気が継続しています。
類似作品やジャンルの比較
『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』は、仲間との絆やトラウマとの対峙を描くホラー作品として、同ジャンルの中でも心理的要素が強い点が特徴です。類似する作品としては、呪いと恐怖の連鎖を描く『リング』や、怨霊の存在が日常を侵食していく『呪怨』が挙げられます。これらは恐怖の対象が不可視の存在である点や、舞台となる土地や家の因縁を掘り下げる点で共通しています。
一方で、本作はアメリカ的な映像スケールやモンスター性を前面に出しており、『ノロイ』や『キュア』のような静かで不気味な雰囲気のホラーとは異なる魅力を持ちます。これら日本的ホラーは、間や余韻を活かすことで恐怖を増幅させる傾向があり、本作の派手な演出やスピード感とは対照的です。
また、終末感や集団でのサバイバルという要素では『トレイン・トゥ・プサン』とも共通点があります。異形の存在に立ち向かいながら、人間関係や自己犠牲を描く構図は、ジャンルを超えて観客の心を掴む要素となっています。
ホラー要素と人間ドラマを両立した作品が好きな人には、本作とこれらの類似作を比較しながら鑑賞することで、恐怖表現や物語の深みの違いを一層楽しめるでしょう。
続編情報
続編情報はありません。現時点で後続の映画続編に関する公式発表は確認できていません(制作状況は今後更新される可能性があります)。
まとめ|本作が投げかける問いと余韻
『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』は、恐怖の対象を倒すという単純な物語構造に留まらず、「過去とどう向き合うか」という普遍的なテーマを突きつけてきます。27年という歳月を経ても消えない心の傷や、忘れたつもりでいた恐怖が再び姿を現す様は、フィクションでありながら現実世界の私たちにも重なる部分があります。
物語を通して描かれるのは、単なる怪物退治ではなく、仲間との再会と絆の再確認、そして自己の内面との対峙です。ペニーワイズという存在は、外的な恐怖であると同時に、登場人物たちの心に潜む弱さや後悔の象徴でもあります。それに立ち向かう過程で、彼らは互いに支え合い、失われた時間や関係を取り戻していきます。
視聴後に残るのは、恐怖の記憶だけではありません。そこには「人は変われるのか」「恐怖を乗り越えた先に何があるのか」という問いが静かに残ります。映像や演出の派手さの裏に潜むこうしたメッセージは、観客に深い余韻を与え、鑑賞後も長く心に響き続けます。
本作は、ホラーとしての緊張感と、人間ドラマとしての温かみを併せ持つ稀有な作品です。恐怖と感動が同居するこの物語は、ジャンルを超えて多くの観客に「もう一度、自分の中の“それ”と向き合ってみよう」というきっかけを与えてくれるでしょう。
ネタバレ注意!本作の考察(開くと見れます)
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本作では、“それ”の正体がより明確に描かれますが、単なる怪物としての存在ではなく、登場人物たちの心の奥に潜む恐怖や罪悪感の化身として機能している点が重要です。ペニーワイズがそれぞれの弱点を突く場面は、彼らが抱えてきたトラウマの象徴であり、物理的な脅威よりも心理的圧迫としての側面が強調されています。
また、ラストで“それ”を倒す方法が物理的な攻撃ではなく、恐怖心を克服するという精神的勝利であったことは、物語全体のテーマ性を強く示しています。これは「恐怖は自分の中にあり、それを小さくすることで支配から逃れられる」というメッセージとして解釈できます。
デリーの町全体が事件を見て見ぬふりをする構図は、現実世界における集団的無関心の比喩とも捉えられます。この町の沈黙が“それ”を長く生かしてきた背景にあると考えると、物語は単なるホラーの枠を超えて、社会的批評の要素をも帯びています。
さらに、リッチーのキャラクターに関しては、台詞や描写の端々に隠された個人的な秘密が示唆されており、その心情を読み解くことで彼の行動や選択に新たな意味が見えてきます。こうした裏テーマの存在が、本作を何度も見返したくなる理由の一つとなっています。
結末の余韻は、単なる勝利の喜びではなく、仲間との別れや喪失感、そして過去との完全な決別の難しさを含んでいます。そのため、視聴後には「自分の中の恐怖や後悔とどう向き合うべきか」という問いが静かに残るのです。
ネタバレ注意!猫たちの会話(開くと見れます)
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