映画『アバウト・タイム 愛おしい時間について』感想・レビュー|人生と時間を見つめ直す優しいラブストーリー

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目次

『アバウト・タイム 愛おしい時間について』とは?|どんな映画?

アバウト・タイム 愛おしい時間について』は、タイムトラベルをテーマにしながらも、人生や家族、愛する人との何気ない日常の大切さを優しく描いたヒューマンドラマ映画です。時間を巻き戻す能力を持つ主人公が、自分の人生を理想的に変えようと奮闘するうちに、本当に大切なことに気づいていく姿を描いています。イギリス映画ならではの温かみあるユーモアと感動が調和した、心を穏やかに満たしてくれる一作です。

基本情報|制作・キャスト/受賞歴・公開情報

タイトル(原題)About Time
タイトル(邦題)アバウト・タイム 愛おしい時間について
公開年2013年(日本公開:2014年)
イギリス
監 督リチャード・カーティス
脚 本リチャード・カーティス
出 演ドーナル・グリーソン、レイチェル・マクアダムス、ビル・ナイ、マーゴット・ロビー
制作会社ワーキング・タイトル・フィルムズ
受賞歴サン・ジョルディ賞 外国映画賞(2014年)、エンパイア賞 最優秀英国作品賞ノミネート(2014年)など

あらすじ(ネタバレなし)

主人公のティムはイギリス南西部の海辺で育った、ごく平凡な青年。しかし21歳の誕生日に父から突然告げられたのは、なんと一族の男性には代々タイムトラベル能力があるという衝撃の秘密でした。半信半疑ながらもその力を試すティム。時間を巻き戻せることを知った彼は、恋愛を成就させたり、失敗した出来事を修正したりと、自分の人生をより良いものにするために奮闘します。

やがてロンドンに移り住んだティムは、美しくチャーミングな女性メアリーと運命的な出会いを果たします。しかし、何度も過去を修正して理想の状況を作り出そうとする中で、ティムは時間を操ることが必ずしも幸せへの近道ではないことに気づいていきます。

果たしてティムは、時間を超えた旅の果てに本当に大切なものを見つけることができるのでしょうか――?

予告編で感じる世界観

※以下はYouTubeによる予告編です。

独自評価・分析

ストーリー

(4.0点)

映像/音楽

(3.5点)

キャラクター/演技

(4.5点)

メッセージ性

(4.5点)

構成/テンポ

(4.0点)

総合評価

(4.1点)

評価理由・背景

『アバウト・タイム 愛おしい時間について』は、タイムトラベルを題材にしながらも人生の普遍的なテーマを丁寧に掘り下げている点が秀逸です。キャラクターの魅力と演技力の高さが特に光っており、ドーナル・グリーソンやレイチェル・マクアダムスら出演陣が物語にリアリティをもたらしています。ストーリー展開やメッセージ性も高評価ですが、映像や音楽面ではシンプルさが目立ち、華やかさを求める視聴者には物足りないと感じるかもしれません。全体として派手さは控えめながら、観終えた後に穏やかな感動と温かい余韻が残る作品です。

3つの魅力ポイント

1 – 日常に寄り添うタイムトラベル

本作のタイムトラベルは、世界を救うような大冒険ではなく、家族や恋人との日常をより良いものにするために使われます。非現実的な設定でありながらも、登場人物たちの小さな選択や後悔に焦点を当てており、視聴者が共感しやすい温かな仕上がりになっています。

2 – 家族愛と人生哲学の融合

父と息子、家族の絆を軸に描かれる本作では、「限りある時間をどう生きるか」という深いメッセージが随所に散りばめられています。特に父親との関係は、多くの観客にとって自身の家族を思い起こさせるほどリアルで感動的です。

3 – 控えめで魅力的な演技陣

ドーナル・グリーソンとレイチェル・マクアダムスによる自然体の演技が、登場人物の誠実さと人間味を際立たせています。また、ビル・ナイ演じる父親の温かな存在感も印象的で、観終わった後も長く記憶に残ります。

主な登場人物と演者の魅力

ティム・レイク(ドーナル・グリーソン)

本作の主人公であり、時間を巻き戻す能力を持つ青年。ドーナル・グリーソンは内気で優しいティムを、ユーモラスかつ誠実に演じ、観客を物語に自然と引き込んでいきます。感情表現の繊細さと不器用な愛情表現が魅力で、彼の成長に伴う内面的な変化が丁寧に描かれています。

メアリー(レイチェル・マクアダムス)

ティムの恋人であり、のちに妻となる女性。レイチェル・マクアダムスは自然体で愛らしい演技を通して、メアリーというキャラクターの純粋さと芯の強さを表現。過去の似た役柄とは異なり、等身大の女性像をリアルに演じています。

ティムの父(ビル・ナイ)

時間旅行の秘密をティムに伝える父親役。ビル・ナイはユーモアと落ち着きのある演技で、物語に深みと感動を与えています。彼の存在は映画全体の温かさの核を担っており、多くの観客にとって忘れられないキャラクターとなっています。

視聴者の声・印象

何気ない毎日がこんなに尊く感じた映画は初めて。
タイムトラベル設定がご都合主義に感じる場面もあった。
父と息子の関係が涙なしには見られなかった…!
途中でテンポがゆるくなりすぎて少し退屈。
観終わったあと、家族に「ありがとう」と言いたくなった。

こんな人におすすめ

家族との時間や日常の大切さを改めて見つめ直したい人

ラブストーリーに加えてちょっとしたファンタジー要素が好きな人

『ラブ・アクチュアリー』や『君に読む物語』が好きな人

穏やかな雰囲気の映画で涙したい気分のとき

派手な展開よりも心にじんわり染みる物語が好みの人

逆に避けたほうがよい人の特徴

スリリングな展開や派手な演出を求めている人
タイムトラベルに対して本格SF的なロジックを重視する人
ゆったりとした物語のテンポに退屈を感じやすい人
恋愛や家族の描写に過剰な感情移入を好まない人
明確な結末やカタルシスを重視するタイプの人

社会的なテーマや背景との関係

『アバウト・タイム 愛おしい時間について』は、SF的なタイムトラベルの装置を用いつつも、その根底にあるのは「時間の使い方」と「人生の選択」という非常に普遍的かつ個人的なテーマです。この作品が観客の心に深く響くのは、特定の社会問題を直接描くのではなく、誰しもが抱える“後悔”や“もっとこうすればよかった”という気持ちに寄り添ってくれるからです。

本作が公開された2010年代初頭は、グローバル化やSNSの拡大、テクノロジーの進化などで情報や人間関係のスピード感が急激に増し、“今この瞬間をどう生きるか”という問いが多くの人にとって切実なものとなっていました。そうした時代背景において、ティムが家族や恋人との時間を丁寧に過ごし、最終的には“やり直さない”選択をする流れは、まさに現代社会への静かなアンチテーゼでもあります。

また、劇中で描かれる父子関係や日常の風景は、核家族化や都市化が進む中で失われつつある“心のつながり”を象徴しており、観る者に「あなたは本当に大切な人と、きちんと時間を共有できていますか?」という問いを投げかけます。

このように『アバウト・タイム』は、派手な社会問題の描写こそありませんが、現代人が見落としがちな「幸福感の根源」をやさしく、しかし鋭く掘り下げている点で、非常に社会的意義のある作品と言えるでしょう。

映像表現・刺激的なシーンの影響

『アバウト・タイム 愛おしい時間について』は、静かで温もりのある映像美が特徴的な作品です。ロンドンの街並みやコーンウォールの海辺といったロケーションが丁寧に切り取られ、まるで絵画のような光と空気感が画面全体を包み込んでいます。カメラワークは派手な動きを控え、キャラクターの表情や場の空気をしっかりと捉える構成になっており、まさに“日常の美しさ”を映像で体現しているといえるでしょう。

音楽面でも同様に、過剰な演出は避けられ、アコースティック調の楽曲や静かなピアノ、ギターなどが使われており、感情を繊細に後押しするような設計になっています。とりわけ印象的なのは、重要な場面で流れるベン・フォールズの「The Luckiest」やニック・ケイヴの「Into My Arms」など、選曲自体がストーリーと強く結びついている点です。

一方で、暴力的・性的・ホラー的な刺激描写はほぼ皆無であり、全年齢層が安心して鑑賞できる内容となっています。恋愛映画ではあるものの、濃密なラブシーンや露骨な表現は意図的に避けられており、むしろ心のやりとりや人生の選択が丁寧に描かれています。

そのため、この映画を鑑賞する際は、エンタメ的な“盛り上がり”を期待するのではなく、静かに心に染み入るような演出を味わうつもりで臨むと、より豊かな時間になるでしょう。観る人の人生経験によって受け取り方が変わる、そんな柔らかな余白のある映像作品です。

関連作品(前作・原作・メディア展開など)

『アバウト・タイム 愛おしい時間について』は、リチャード・カーティスが脚本・監督を務めた完全オリジナル作品であり、原作となる小説やシリーズ作品は存在しません。そのため、観る順番に迷うことはなく、本作単体で完結した物語を楽しむことができます。

監督のリチャード・カーティスは、『ラブ・アクチュアリー』や『パイレーツ・ロック』などで知られる脚本家・監督であり、本作は彼の長編監督引退作としても位置付けられています。これまでの作品と同様に、人と人とのつながりや人生の愛おしさをユーモラスかつ温かく描く作風が、本作にも色濃く反映されています。

また、劇中にはアンディ・ムリガン原作の小説『トラッシュ!この街が輝く日まで』が小道具として登場し、のちに映画化された『トラッシュ!』の脚本をリチャード・カーティス自身が手がけています。自身の作品同士をさりげなくリンクさせる演出も見どころのひとつです。

2025年にはFilmarks主催で「ジューンブライド上映」として全国64館で再上映されるなど、メディア展開やファンイベントも継続的に行われており、本作の根強い人気と長期的な支持がうかがえます。

類似作品やジャンルの比較

『アバウト・タイム 愛おしい時間について』が好きな人には、人生の選択や後悔、家族との絆を描いた作品や、時間や記憶をモチーフにしたラブストーリーがおすすめです。以下に代表的な類似作品をいくつか紹介します。

  • 『ラ・ラ・ランド』(2016) ─ 夢と恋の両立を描いたミュージカル作品。華やかな映像美とともに、「人生における選択と代償」をテーマにしており、『アバウト・タイム』と重なる余韻が味わえます。
  • 『エターナル・サンシャイン』(2004) ─ 恋人との記憶を消すという設定で、記憶と愛の関係を描いた異色のSFラブストーリー。現実と幻想が入り混じる点が『アバウト・タイム』のタイムトラベル要素と共鳴します。
  • 『ビッグ・フィッシュ』(2003) ─ 家族の物語をファンタジックに描いたティム・バートン作品。親子のつながりを主題にしながら、嘘のようで本当のような話が、『アバウト・タイム』の語り口とよく似ています。
  • 『イルマーレ』(2006) ─ 時間を超えて文通する男女の切ない恋物語。時系列のズレを利用した構成が本作と似ており、静かな感動を味わいたい人にぴったりです。
  • 『ちょっと思い出しただけ』(2022) ─ 過去の記憶をたどる構成で、恋愛の記憶と現在を行き来する邦画。リアルな感情の揺れが特徴で、『アバウト・タイム』と同様に静かな余韻を残します。

いずれも『アバウト・タイム』と同じく、人生の儚さや時間の尊さを描いた作品群であり、感動を求める人には強くおすすめできる作品です。逆に、ド派手な展開や刺激的な演出を期待する方にはやや物足りなく感じるかもしれません。

続編情報

2025年6月時点において、『アバウト・タイム 愛おしい時間について』に関する公式な続編の発表は確認されていません。また、続編として制作・配信されている映像作品も存在しておらず、本作は単独作品として完結しています。

監督を務めたリチャード・カーティスは、本作をもって長編監督からの引退を表明しており、続編の構想や脚本開発が進められている形跡も現在のところ見られません。一部SNSでは “About Time 2” という非公式予告動画が話題になりましたが、これらはファンによるコンセプト動画や誤情報であり、公式とは一切関係がありません。

また、スピンオフやプリクエルといった派生作品の存在も確認されておらず、ストーリー構成的にも本作は1本で完結していることが強調されます。物語の余白や余韻が魅力の作品であることから、あえて続編を作らないことがファンの間でも支持されています。

現時点では新たな展開は期待できない状況ですが、今後のリチャード・カーティスの脚本活動やキャスト陣の再共演といった“精神的な続編”の可能性には注目していきたいところです。

まとめ|本作が投げかける問いと余韻

『アバウト・タイム 愛おしい時間について』は、タイムトラベルという非現実的な設定を通して、私たちの日常に潜む「かけがえのなさ」をそっと教えてくれる作品です。派手な演出や驚きの展開はありませんが、その代わりにあるのは、穏やかでありながら心に深く沁み込む時間の積み重ね。そしてそれはまさに、現実に生きる私たちが見過ごしがちな真実でもあります。

誰しも「もう一度やり直せたら…」と思う瞬間があります。しかしティムの物語を追うことで気づかされるのは、やり直せるから幸せなのではなく、“やり直したくなるような今”をどう生きるかこそが本質だということ。限りある時間をどう使うか、自分にとって本当に大切な人とどのように過ごすか、その問いが観る者一人ひとりに優しく投げかけられます。

また、親子の絆や恋人との関係、日々の小さな選択がもたらす未来の違いに触れることで、「時間」とは単なる連続ではなく、私たちの意思によって意味づけられるものだと実感させられます。本作が描く“特別じゃない日常の美しさ”は、どんな大作にも負けない力を持っています。

鑑賞後に残るのは、大きな感動というよりも、ふとした時に思い返すような静かな余韻。そしてその余韻こそが、ティムが最後に選んだ「やり直さない人生」と同じように、私たちの中にそっと灯る生き方のヒントとなるのです。

ネタバレ注意!本作の考察(開くと見れます)

OPEN

『アバウト・タイム』は、単なる“タイムトラベル・ラブストーリー”にとどまらず、時間という概念に対する哲学的な問いかけが随所にちりばめられています。たとえば父親が息子に告げる「同じ1日を2回生きてみなさい」という助言。これは、時間を操作できる特権を使うこと以上に、“人生の一瞬一瞬をどう感じ取るか”という人間の意識の在り方そのものを示唆していると言えるでしょう。

物語後半でティムは、時間を巻き戻すことをやめ、“ありのままの日常を丁寧に生きる”ことを選びます。この選択は、現代人にありがちな「もっと良くするために過去を悔やみ続ける」思考からの解放を意味しており、観客にも「今という時間に対する向き合い方」を見直すきっかけを与えてくれます。

また、父との別れのシーンでは、時間を超える力があっても避けられない“死”という存在に触れています。ここで示されるのは、どれだけ時間を操作できても、「永遠に同じ時間は生きられない」という現実と、それをどう受け入れるかというテーマです。死別を描くことで、時間の有限性がより強調され、人生そのものへのまなざしが深まります。

さらに注目したいのは、メアリーというキャラクターに対しては、ティムが時間を繰り返し操作してもその“本質的な魅力”には一切手を加えていない点です。これは、「本当に大切なものは、操作の必要すらない」という価値観を象徴しており、愛情の純粋性と信頼を映し出しています。

本作が投げかけているのは、タイムトラベルという仕掛けを通して、「もし人生をやり直せたら何を変える?」という問いではなく、「やり直せないとしたらどう生きる?」という、より現実的で本質的な問いです。その問いに対するひとつの答えが、ティムが最後に選んだ生き方に集約されているのです。

ネタバレ注意!猫たちの会話(開くと見れます)

OPEN
君、あのラストの選択…本当にあれでよかったのかなって思っちゃって、何度も考えちゃうんだ。僕ならまた戻ってやり直したくなるかもしれないよ。
でもあの選び方がかっこよかったじゃん。戻らなくても幸せだって言えるの、なかなかできないよ。
うん…でもお父さんと過ごせる最後の時間は泣いちゃったよ。何回見てもつらいよ…
わかる、あの紅茶いれるシーンとか地味なのにすごく響いたよね。
あとさ、メアリーのこと一切いじらなかったの、すごく誠実でキュンとした…君はそう思わなかった?
正直言うと…あのタイムトラベルの力、僕なら毎日おやつの時間やり直して無限に食べてたかも。
君、それ絶対“人生の使い方”まちがってるよ。
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