『キングスマン:ファースト・エージェント』とは?|どんな映画?
『キングスマン:ファースト・エージェント』は、世界的人気を誇るスパイアクションシリーズ「キングスマン」の原点を描いた作品です。第一次世界大戦前夜の混乱を舞台に、“スパイ組織キングスマン”がいかにして誕生したのかが壮大なスケールで描かれます。
この映画は、歴史の裏側で暗躍する陰謀と、それに立ち向かう人々の姿をスタイリッシュかつユーモラスに描いたスパイ×アクション×歴史ドラマです。シリーズの代名詞でもあるキレのあるアクションと英国紳士の気品、そして笑いのセンスは健在でありつつ、シリーズ屈指のドラマ性が加わった一作と言えるでしょう。
一言で表すなら、「歴史の裏側で世界を変えた“最初の紳士スパイ”の物語」。シリーズ未見の方でも楽しめる独立性を持ちつつ、ファンにとっては起源を知る喜びも詰まった、まさに“始まりの物語”です。
基本情報|制作・キャスト/受賞歴・公開情報
タイトル(原題) | The King’s Man |
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タイトル(邦題) | キングスマン:ファースト・エージェント |
公開年 | 2021年 |
国 | イギリス/アメリカ |
監 督 | マシュー・ヴォーン |
脚 本 | マシュー・ヴォーン、カール・ガイダシェク |
出 演 | レイフ・ファインズ、ハリス・ディキンソン、ジャイモン・フンスー、ジェマ・アータートン、リス・エヴァンス |
制作会社 | 20世紀スタジオ、マルヴ・スタジオズ |
受賞歴 | 特筆すべき主要映画賞での受賞はなし |
あらすじ(ネタバレなし)
第一次世界大戦前夜のヨーロッパ。世界が混乱と陰謀に包まれようとしていた時代、英国の名家に生まれた公爵オーランド・オックスフォードは、国の未来を案じながらも、平和的な解決を願う紳士でした。
しかし、ある事件をきっかけに、彼のもとに“とある極秘任務”が舞い込んできます。やがて、世界各地で起こる暗殺や戦争の裏で暗躍する組織の存在が浮かび上がり、歴史を陰から操る者たちとの戦いが始まるのです。
若き日のコンラッドや忠実な使用人たちとともに、オックスフォードは、世界の崩壊を食い止めるための危険な作戦に挑むことになります。
果たして、彼らは世界の未来を守ることができるのか――? “最初のキングスマン”が歩んだ道が、今、明かされます。
予告編で感じる世界観
※以下はYouTubeによる予告編です。
独自評価・分析
ストーリー
(3.5点)
映像/音楽
(4.0点)
キャラクター/演技
(3.5点)
メッセージ性
(3.0点)
構成/テンポ
(3.0点)
総合評価
(3.4点)
シリーズの前日譚として新たな歴史的視点を取り入れた点は斬新で、映像や音楽の質も非常に高い水準にあります。ただし、テンポや物語構成の一部にはやや冗長さが見られ、特に前半の展開で観客を惹きつける力に欠ける部分があるのも事実です。キャラクター造形や演技は概ね良好ながらも、前作のような鮮烈な個性にはやや及ばず。
また、シリーズの持ち味であるユーモアとダークな世界観のバランスも、本作ではややトーンが重めになっており、好みが分かれるところ。総合的には完成度の高い作品であることは間違いありませんが、商業的・批評的な成功という観点では控えめな結果に留まっており、総合評価は3.4点としました。
3つの魅力ポイント
- 1 – 歴史とフィクションの融合
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実在の歴史上の事件や人物を取り入れながら、フィクションとしてのスパイアクションを巧みに織り交ぜている点は本作ならではの魅力。ラズプーチンや大戦勃発の裏に潜む陰謀など、史実の知識があるほど楽しめる仕掛けが豊富です。
- 2 – 英国紳士の美学とアクション
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『キングスマン』シリーズ特有のスタイリッシュなアクションは本作でも健在。特に“英国紳士らしさ”を体現した立ち振る舞いや戦闘スタイルが美しく、重厚な時代背景との対比でより際立っています。傘を使った戦闘や仕込み武器などのガジェット演出も見どころ。
- 3 – 新たな視点で描かれる“始まり”
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これまでの作品と異なり、本作では若き日の主人公たちが組織を作り上げていく過程に焦点を当てています。単なる前日譚にとどまらず、シリーズの世界観がいかにして生まれたかという“創設神話”としての深みがあり、ファンにとっては重要なピースとなる内容です。
主な登場人物と演者の魅力
- オーランド・オックスフォード公(レイフ・ファインズ)
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シリーズにおける“最初のキングスマン”とも言える存在。品格と知性を備えた紳士ながら、戦う父親としての強さも併せ持つ複雑な人物像を、レイフ・ファインズが圧倒的な説得力で演じています。静かな語り口と激しいアクションのギャップも魅力の一つです。
- コンラッド・オックスフォード(ハリス・ディキンソン)
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理想に燃える若き青年であり、父の背中を追いながら自らの道を模索する姿が印象的。ディキンソンは純粋さと勇敢さの両面を的確に表現し、観客に共感と切なさを与える存在となっています。
- シュラフス(ジャイモン・フンスー)
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オックスフォード家の使用人でありながら、戦闘の達人として任務を支える頼もしい存在。寡黙な役柄の中に強さと忠誠心をにじませる演技は、ジャイモン・フンスーの持ち味が活かされています。
- ポリー(ジェマ・アータートン)
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知性と行動力を兼ね備えたオックスフォード家の家政婦。裏では情報管理や諜報活動の中心を担う重要な存在であり、アータートンの芯の強い演技が、ポリーの魅力をより一層際立たせています。
視聴者の声・印象













こんな人におすすめ
逆に避けたほうがよい人の特徴
軽快でユーモラスなスパイアクションを期待している人
テンポの良い娯楽作品を求める人
過度な歴史描写や重厚なテーマに興味がない人
シリーズを未見で、背景や前提がないと理解しづらいと感じる人
メッセージ性よりもド派手な演出や爽快感を重視する人
社会的なテーマや背景との関係
『キングスマン:ファースト・エージェント』は、第一次世界大戦という歴史的な転換点を舞台に据えた作品であり、その背景には国家間の緊張、階級社会、そして戦争の悲劇といった現実的なテーマが織り込まれています。フィクションでありながら、物語の骨格には明確な史実が存在しており、それが映画の厚みと説得力を高めています。
とりわけ注目すべきは、“戦争の裏で誰が利益を得ているのか”という視点です。本作では、実在の歴史的事件に陰謀的な解釈を加えることで、現代の情報戦やプロパガンダ、国家の利権構造といった問題とも重ね合わせられる構図が描かれています。
また、主人公オックスフォード公の「暴力ではなく対話による平和的解決を望む」という姿勢は、単なる理想主義にとどまらず、戦争を止められなかった知識人層のジレンマを象徴しているとも言えるでしょう。これは現在における国際問題や外交アプローチの難しさとも通じる部分があります。
さらに、階級制度の中で埋もれがちな“使用人”たちが活躍する描写には、当時の社会構造への批判や、隠れた力が歴史を動かすという逆転の視点が込められています。この点は、近年の多様性・包摂性の流れとも共鳴するものです。
こうしたテーマ性が、本作を単なるスパイアクションに終わらせず、社会の構造や人間の本質に目を向けさせる作品にしていることは間違いありません。過去を描きながらも、観客に“いま”を問いかける力を持つ映画です。
映像表現・刺激的なシーンの影響
『キングスマン:ファースト・エージェント』は、シリーズの代名詞とも言えるスタイリッシュな映像演出を踏襲しつつ、より重厚で歴史的な雰囲気を意識したクラシカルで品格ある映像美が特徴です。戦場の描写や王宮の装飾、衣装や光の使い方など、美術面でのこだわりが随所に見られます。
一方で、アクションシーンにおいては躍動感にあふれ、特に“ラズプーチンとの戦闘シーン”はシリーズ屈指の奇抜さと過激さを併せ持ち、強いインパクトを残します。バレエと武術が融合したような独特の戦い方やカメラワークは、視覚的な快楽と驚きを与える一方、暴力的な描写に敏感な方には刺激が強い可能性があります。
また、第一次世界大戦という題材を扱う関係上、戦闘や死を扱ったシーンも複数登場します。過度なスプラッター表現は控えめながらも、戦争の残酷さや命の重みを感じさせるリアリズムが強調されており、心情的に重く感じる場面もあるでしょう。
性的描写については明示的なものはほとんど存在せず、全年齢層に配慮した構成となっています。ただし、物語のトーンそのものがシリーズ過去作に比べてやや暗く、子どもやライトなアクション映画を期待する視聴者にはややヘビーに映る可能性があります。
総じて、本作は映像表現にこだわりつつも、重厚さと現実感を両立させた作品であり、特定のシーンでは注意を要する部分もあるため、心構えをもって臨むことでより深く楽しめる作品です。
関連作品(前作・原作・メディア展開など)
『キングスマン:ファースト・エージェント』は、「キングスマン」シリーズのスピンオフ作品にあたり、シリーズの“始まり”を描いた前日譚です。直接的な続編ではありませんが、時系列的にはシリーズの最初に位置づけられます。
シリーズ全体の観る順番としては、公開順ではなく時系列順での鑑賞もおすすめです。具体的には以下の順が理解しやすい構成になっています:
- 『キングスマン:ファースト・エージェント』(本作)
- 『キングスマン』(2014年)
- 『キングスマン:ゴールデン・サークル』(2017年)
原作はマーク・ミラーとデイヴ・ギボンズによるコミック『ザ・シークレット・サービス』ですが、本作はその原作からは大きく離れ、オリジナル脚本で構成されたフィクションとなっています。原作との直接的な関連は薄く、原作ファンでも新たな気持ちで楽しめる内容です。
また、本シリーズは映画以外にもゲームやアパレルコラボ、限定グッズ販売など、さまざまなメディア展開が行われていますが、特に本作に関してはヴィジュアルブックやアートワーク集などの出版物が注目を集めました。作品世界をより深く知る手段として活用できます。
このように『キングスマン:ファースト・エージェント』は、「キングスマン」シリーズをより立体的に理解するための“起点”とも言える作品であり、シリーズファンはもちろん、初めての方にも入り口として適しています。
類似作品やジャンルの比較
『キングスマン:ファースト・エージェント』は、スパイアクションに歴史とフィクションを融合させた独自路線の作品ですが、似たようなジャンルや雰囲気の映画はいくつか存在します。ここでは、特に共通点や視聴体験において近いと感じられる作品を紹介します。
『コードネーム U.N.C.L.E.』(2015年) 冷戦時代を背景にしたスパイアクションで、スタイリッシュな演出とユーモアが光る一作。『キングスマン』シリーズと同様、スーツ姿で戦う“英国紳士”的な要素が魅力で、アクションとキャラクターの軽妙さが近い印象です。
『007』シリーズ(特にダニエル・クレイグ期) 本作ほどユーモアは強くないものの、国家の陰謀や歴史的背景を描く点では共通しています。シリアスなトーンとスタイリッシュな演出のバランスを楽しみたい方におすすめです。
『アトミック・ブロンド』(2017年) 女性スパイを主人公とした激しいアクションが魅力で、冷戦下のベルリンを舞台にしたビジュアルセンスも印象的。『金士曼起源』のような緊張感ある時代設定が好みの方には刺さる内容です。
『ベイビー・ドライバー』(2017年) ジャンルとしてはやや異なるものの、音楽とアクションを融合させたスタイリッシュな演出は本作と共通点があります。テンポ感やセンス重視の演出を求めるなら好相性です。
このように、『金士曼起源』が持つ要素は他作品とも部分的に重なりながらも、歴史×スパイ×創設物語という構成は独特であり、類似ジャンルの中でも際立った個性を放つ作品です。
続編情報
『キングスマン:ファースト・エージェント』には、明確な続編や関連作品の構想が複数存在しています。現時点では正式な公開日は未定ながらも、以下のようなプロジェクトが進行中または報道されています。
1. 続編の存在について
本作の世界観を引き継ぐ続編が構想・準備中であるとマシュー・ヴォーン監督が複数のインタビューで明言しています。また、同じシリーズ内で本編の続編(『キングスマン3(仮)』)と並行して動いているプロジェクトがあると報じられています。
2. タイトルと公開時期
『The King’s Man: The Traitor King(仮題)』というタイトルの企画が報道されており、脚本はすでに完成済みとの情報もあります。撮影開始時期や公開日は公式に発表されていないものの、2025年以降の動きが期待されています。
3. 制作体制(監督・キャストなど)
引き続きマシュー・ヴォーン監督がメガホンを取り、主要キャストの一部が再登場する可能性があるとされています。ただし詳細な配役や制作スケジュールについては未確定であり、変更の可能性も含んでいます。
4. プリクエル/スピンオフとしての位置づけ
本作はそもそも「キングスマン」シリーズの前日譚にあたる作品であり、続編もこの“創設期”の物語をさらに掘り下げるものになると予想されています。特に第一次世界大戦後の混乱や陰謀を描くことで、組織の拡大と国際的な展開が示唆される構成になる可能性が高いです。
また、本編とは異なるアメリカ支部「ステイツマン」に焦点を当てたスピンオフ映画やドラマシリーズの企画も進行中で、ユニバース拡大の動きが継続していることが確認されています。
まとめ|本作が投げかける問いと余韻
『キングスマン:ファースト・エージェント』は、これまでの「キングスマン」シリーズとは一線を画す作品でありながら、シリーズの“核”を形づくる物語として非常に重要な位置づけにあります。スパイ映画でありながら、同時に戦争の裏側で生まれる理想と現実のせめぎ合いを描いた社会派ドラマでもありました。
劇中では、力で秩序を守ろうとする者と、対話と知性で平和を模索する者が対立し、そのどちらもが正義と呼べるだけの理由を持っています。この構図は、現代社会における外交や戦争、政治の在り方に重ねて考えさせられるテーマでもあり、単なるエンタメにとどまらない「正義とは何か」「力とは何のためにあるのか」という普遍的な問いを観客に投げかけます。
また、本作が描いた“はじまりの物語”は、組織や信念がどうやって形づくられていくかを描くと同時に、それに伴って失われていくものへの喪失感や余韻も強く残ります。キャラクターたちの選択と覚悟は、フィクションでありながらも非常にリアルで、観る者の感情に深く訴えかけてきます。
特にシリーズファンにとっては、「なぜキングスマンが“紳士”を掲げるのか」「なぜ非公式な存在として戦い続けるのか」という根幹が理解できる内容であり、これから続く物語に対する期待と同時に、この原点に込められた思想に静かな感動を覚えることでしょう。
終始、暗く重たい雰囲気に包まれながらも、最後に差し込まれる光や希望の描写は、本作がただの前日譚ではなく、「人が人であるための矜持」を描いた物語であることを示しています。
鑑賞後、静かに問いかけてくるこの映画は、きっとあなたの中に何かを残してくれるはずです。
ネタバレ注意!本作の考察(開くと見れます)
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本作においてもっとも衝撃的な展開のひとつが、コンラッドの死です。若者としての理想と行動力に満ちた彼が、まさかの形で命を落とす展開は、物語の転換点として大きな意味を持ちます。
この出来事は、父オックスフォード公の“非暴力”への信念を揺さぶり、結果的にスパイ組織の設立という方向転換を生む導火線となります。つまり、個人的な喪失と感情が、世界を変える原動力になるという非常に人間的な要素が、組織の根源として据えられているのです。
また、作中で描かれる敵組織の存在や首謀者の正体(牧羊者)は、「混沌から利益を得る者が存在する」という暗喩でもあります。これは現代の国際情勢や情報操作ともつながる構造であり、“正体の見えない敵”という不気味さが、キングスマンという組織の必要性を裏付ける構成になっています。
さらに、使用人たち(特にシュラフスとポリー)がオックスフォード公を陰で支える姿は、従来の階級制度に対する逆説的なメッセージとも受け取れます。形式的な上下関係ではなく、信頼と能力によって結ばれた関係性が組織の基盤になっているという点も、シリーズに共通する「現代的な騎士道精神」として再解釈できます。
全体を通して、本作が描いたのは“英雄の誕生”ではなく、“理念の継承”だったとも言えるでしょう。オックスフォード家が背負った悲劇を通して、「キングスマン」という名前に込められた意味と想いが、静かに観客の胸に響いてくるのです。
あなたはこの物語の中に、どんな問いを感じたでしょうか?
ネタバレ注意!猫たちの会話(開くと見れます)
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