『マトリックス』とは?|どんな映画?
『マトリックス』は、1999年に公開されたSFアクション映画で、現実と思っていた世界が実は仮想現実だった――という衝撃的な世界観を描いた作品です。
コンピューターに支配された未来、人類が仮想世界「マトリックス」の中で生きているという設定のもと、主人公ネオがその真実に目覚め、レジスタンスとして戦いに身を投じていく姿を描きます。
一言で言えば、「仮想現実×哲学×アクション」を圧倒的な映像と世界観で融合させた革新的映画。
バレットタイム(弾丸をスローモーションで避ける視覚効果)や重力を無視したワイヤーアクションなど、当時の映画表現に革命をもたらし、今なお多くの作品に影響を与え続けています。
基本情報|制作・キャスト/受賞歴・公開情報
タイトル(原題) | The Matrix |
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タイトル(邦題) | マトリックス |
公開年 | 1999年 |
国 | アメリカ |
監 督 | ラリー・ウォシャウスキー、アンディ・ウォシャウスキー(現:ラナ&リリー・ウォシャウスキー) |
脚 本 | ラリー・ウォシャウスキー、アンディ・ウォシャウスキー |
出 演 | キアヌ・リーヴス、ローレンス・フィッシュバーン、キャリー=アン・モス、ヒューゴ・ウィーヴィング |
制作会社 | ヴィレッジ・ロードショー・ピクチャーズ、シルバー・ピクチャーズ、ワーナー・ブラザース |
受賞歴 | 第72回アカデミー賞:視覚効果賞、編集賞、音響賞、音響編集賞の4部門受賞 |
あらすじ(ネタバレなし)
昼は平凡なプログラマー、夜は凄腕ハッカー――そんな二重生活を送る青年ネオ。ある日、「マトリックスとは何か?」という謎めいた問いをきっかけに、彼の世界は大きく揺らぎ始めます。
現実と夢の境界があいまいになる中、ネオのもとに現れたのは、謎の男モーフィアスとその仲間たち。彼らは何者で、なぜネオに接触してきたのか?
世界の真実を知る覚悟があるか――そう問いかけられたネオが選んだ選択は、やがて彼自身の運命だけでなく、人類全体をも巻き込むことに…。
現実の裏側に隠された衝撃の真実とは?すべては「マトリックス」という名の謎に導かれていく――。
予告編で感じる世界観
※以下はYouTubeによる予告編です。
独自評価・分析
ストーリー
(4.0点)
映像/音楽
(4.5点)
キャラクター/演技
(4.0点)
メッセージ性
(4.5点)
構成/テンポ
(4.0点)
総合評価
(4.2点)
『マトリックス』は、革新的な映像表現と哲学的な問いかけを融合させた作品として、映画史に確かなインパクトを残しました。映像/音楽面では当時としては異例の先進的な技術を導入し、特に「バレットタイム」の演出は後続作品に大きな影響を与えました。ストーリーや構成は緻密ながらも説明的でやや難解な部分もあり、観る側の理解度に依存する面があります。キャラクター造形や演技も印象的ですが、感情的な深掘りにはやや弱さも。ただし、全体としては映像と思想が見事に融合した、ジャンルを超えた名作です。
3つの魅力ポイント
- 1 – 仮想現実と哲学が融合した世界観
『マトリックス』最大の魅力は、「我々が見ている現実は本物なのか?」という問いかけをベースにした仮想現実の構造です。哲学的なテーマをアクション映画のフォーマットで提示し、観る者に深い思索を促す点が他のSF映画と一線を画します。
- 2 – 映像革命を起こしたバレットタイム演出
スローモーションとカメラの回転を組み合わせた「バレットタイム」演出は、当時の観客を圧倒し、映画の視覚表現を一変させました。この技術は後続の作品やCMにも多大な影響を与え、いまや映像技術の金字塔といえる存在です。
- 3 – 普遍的テーマを内包したキャラクター設定
主人公ネオが「自分は何者か?」と問い続けながら成長していく過程は、仮想現実というSF設定を超えて、自己確立や運命との対峙という普遍的なテーマを描いています。彼を導くモーフィアスや、信念を持つトリニティなど、脇を固めるキャラも魅力的です。
主な登場人物と演者の魅力
- ネオ(キアヌ・リーヴス)
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仮想現実「マトリックス」の真実に目覚め、救世主としての運命に導かれていく主人公。キアヌ・リーヴスは抑えた演技でネオの内面の葛藤や成長を表現し、静と動のコントラストで観客を魅了します。無機質な世界における人間らしさを体現する存在感が光ります。
- モーフィアス(ローレンス・フィッシュバーン)
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反乱軍のリーダーであり、ネオを「選ばれし者」と信じて導く存在。ローレンス・フィッシュバーンは重厚で威厳ある声と動作で、カリスマ的リーダー像を説得力たっぷりに演じ切っています。哲学的対話シーンでも印象深い存在です。
- トリニティ(キャリー=アン・モス)
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冷静沈着な戦士でありながら、ネオに深い感情を抱く女性キャラクター。キャリー=アン・モスは、アクションシーンでの鋭い動きと、感情表現の柔らかさを兼ね備え、強さと優しさを同居させたヒロイン像を確立しました。
- エージェント・スミス(ヒューゴ・ウィーヴィング)
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マトリックスの秩序を守るために人類を監視するプログラム的存在。ヒューゴ・ウィーヴィングは冷酷で機械的な口調と表情を徹底し、人間味のない不気味さを際立たせています。その異質な存在感は、観る者に強烈な印象を残します。
視聴者の声・印象













こんな人におすすめ
逆に避けたほうがよい人の特徴
テンポの早いストーリー展開や派手な演出ばかりを求める方
哲学的なテーマや抽象的な会話に興味が持てない方
説明的なセリフや用語が多い映画にストレスを感じる方
CGや映像表現の古さが気になってしまう方
複雑な物語構造よりも分かりやすさを重視する方
社会的なテーマや背景との関係
『マトリックス』が描く世界観には、単なるSFアクションにとどまらない深い社会的・哲学的メッセージが込められています。映画が公開された1999年当時は、インターネットの普及によって人々の情報環境が大きく変化し、現実と仮想の境界が曖昧になりつつある時代でした。
本作における「マトリックス」という仮想現実は、現代社会における“見えない支配構造”や“受け身で消費する情報社会”の比喩として解釈されることが多いです。人間がプログラムによって管理され、現実と信じている世界が実は作られた幻想であるという設定は、情報過多の現代に生きる我々にも通じる問題を提起します。
また、主人公ネオが「自分の生きる世界に疑問を持ち、自ら選択して真実を知る」という流れは、現実社会における目覚めや自己認識の象徴とも言えます。これは、社会の常識やシステムに疑問を持ち、自分自身の人生を主体的に選び取ることの大切さを描いた寓話とも受け取れます。
さらに、エージェント・スミスの存在は、管理社会の無機質な顔として描かれ、強い規律と秩序による「安全な世界」と、自由と選択を重んじる「不安定な世界」との対比が、本作全体の構造に深みを与えています。これは、21世紀以降により顕著になる監視社会やAIによる管理の問題を予見したとも考えられます。
つまり『マトリックス』は、派手なアクションや仮想現実という表面的な要素の裏に、現代社会に対する鋭い批評性と、自由意志の重要性という普遍的なテーマを内包しており、観る者に深い問いを投げかける作品です。
映像表現・刺激的なシーンの影響
『マトリックス』は、映像美と革新的な演出手法により、映画の表現領域を大きく拡張した作品です。とりわけ注目されるのが、「バレットタイム」演出と呼ばれる、スローモーションと全方位からのカメラ回転を組み合わせた視覚効果で、主人公が弾丸を避けるシーンなどに多用されています。これにより、アクションシーンがこれまでにない重力感と臨場感を持ち、観客に強烈な印象を与えました。
全体を通して、映像はモノトーンでクールなトーンが支配しており、ネオンやコード、ミラーなどの要素が頻繁に使われることで、独自のサイバーパンク的世界観を構築しています。音響においても、テクノ・インダストリアル系の楽曲が用いられ、近未来感と緊張感を巧みに演出しています。
一方で、戦闘シーンでは銃撃や格闘などのバイオレンス描写が比較的多く含まれており、視覚的に刺激が強いと感じる人もいるかもしれません。血が飛び散るような直接的なゴア描写は控えめですが、スタイリッシュでスピード感のあるバトルが頻出するため、アクション描写に敏感な方は注意が必要です。
また、映画内で描かれる「現実とは何か」というテーマに伴い、不気味な装置や人間の意識を操作するシーンなどが登場し、一部では生理的に不快感を覚える可能性のある描写も見られます。これらは演出意図として必要な要素ですが、小さなお子さまや感受性の高い視聴者が観る際には、事前にその点を理解しておくことが望ましいでしょう。
全体として『マトリックス』の映像表現は、単なる技術の見せ場ではなく、物語のテーマと完全に融合した芸術的表現として機能しており、その意味で映画表現の可能性を大きく切り開いた作品といえます。
関連作品(前作・原作・メディア展開など)
『マトリックス』は単体作品としても成立していますが、その世界観は映画以外にも大きく展開されており、シリーズ全体を通して体験することでより深い理解と没入感が得られる構成となっています。
まず、2003年には2本の続編とともに、アニメーションオムニバス『アニマトリックス』が制作・公開されました。これは複数の短編から成る作品集で、マトリックス世界の背景やサイドストーリーが描かれており、映画本編には登場しないキャラクターやエピソードも多数登場します。中でも「セカンド・ルネッサンス」は、機械と人類の戦争に至る経緯を描いており、世界観の理解に非常に重要なパートです。
ゲーム展開としては『Enter the Matrix』(2003年)、『The Matrix: Path of Neo』(2005年)、そしてオンラインゲーム『The Matrix Online』などが存在し、一部のタイトルでは映画と直接連動するシーンが含まれています。これにより、メディア横断的にマトリックス世界を補完する設計がなされている点も大きな特徴です。
なお、映画『マトリックス』は完全なオリジナル脚本であり、原作小説やコミックは存在しませんが、その着想は押井守監督の『攻殻機動隊』やウィリアム・ギブスンの『ニューロマンサー』といったサイバーパンク作品に強く影響を受けたとされています。とくに「人間の意識とデジタル世界の融合」「身体からの解放」といったテーマ性において共通点が見られます。
観る順番としては、シリーズを時系列順に追う場合でも、まずは『マトリックス』(1999)→『アニマトリックス』(一部)→『リローデッド』『レボリューションズ』の順で視聴するのが理想です。アニマトリックスは内容的に前日譚が含まれるため、初見で観るとやや難解な印象を受けるかもしれません。
このように『マトリックス』は、映画を起点に複数のメディアで世界観が拡張される“トランスメディア”作品としても非常に評価が高く、シリーズ全体を通して楽しむ価値があると言えるでしょう。
類似作品やジャンルの比較
『マトリックス』はサイバーパンクや仮想現実を題材とする映画の代表作として、数多くの類似作品と比較されます。ここでは、ジャンル・テーマ・映像表現の観点から注目すべき作品を紹介します。
『ブレードランナー』は、退廃的な未来都市や人間と人工知能の境界といったテーマが共通しており、ビジュアル面でも『マトリックス』に大きな影響を与えたとされる作品です。ただし、『ブレードランナー』が内省的で詩的な表現に重きを置いているのに対し、『マトリックス』はよりアクション寄りでエンタメ性が強い点が特徴です。
『攻殻機動隊(GHOST IN THE SHELL)』は、『マトリックス』の根幹にある仮想現実・義体・電脳ネットワークといったアイデアの原点ともいえる日本のアニメ作品です。ウォシャウスキー姉妹がインスパイアを公言しており、思想的にも非常に近い関係性があります。
『インセプション』は、夢と現実の境界を描くというテーマが重なり、複雑な世界構造やメタ的構成も似ています。映像的な工夫や時空の歪みを表現したシーンも、『マトリックス』に通じる革新性を持っています。
『AKIRA』や『サイバーパンク:エッジランナーズ』といった日本発のサイバーパンク作品も、荒廃した都市、人体改造、若者の葛藤といったモチーフで共鳴します。これらは『マトリックス』が描く仮想現実とは異なる切り口ながらも、“人間とは何か”を問いかける哲学的側面では共通しています。
また、『ストレンジ・デイズ』や『ミニオリティ・リポート』のように、テクノロジーが個人の自由や社会システムに与える影響を描く作品も、『マトリックス』と同じく現実批評的な視点を持っています。
このように『マトリックス』は、サイバーパンク/哲学SFというジャンルにおけるハブ的存在であり、そこから広がる類似作品を観ることで、テーマの多層性や映像進化の流れをより深く味わうことができます。
続編情報
『マトリックス』シリーズは、1999年の第1作目公開以降、すでに複数の続編が制作されてきましたが、さらに現在「第5作目」の制作が正式に進行中であることが明らかになっています。
1. 続編の有無
2024年にWarner Bros.のマイク・デ・ルカとパム・アブディが、『The Matrix 5』(仮題)の開発を正式に発表しました。これは『マトリックス レザレクションズ』(2021年)に続く作品であり、シリーズのさらなる展開が予定されています。
2. 続編のタイトル・公開時期
正式タイトルはまだ未発表ですが、業界メディアでは『The Matrix 5』として仮称されています。公開時期も未定ですが、2025~2026年以降の公開を目指して準備が進められていると報じられています。
3. 監督・キャストなど制作体制
監督は『キャビン』『オデッセイ』などで知られるドリュー・ゴダードが務める予定です。シリーズ生みの親であるラナ・ウォシャウスキーは監督には関与せず、製作総指揮として関わるとされています。キャストについては正式発表はないものの、キアヌ・リーヴスやキャリー=アン・モスの再登場は「検討中」と報じられています。
4. プリクエル・スピンオフなど
現時点ではスピンオフやプリクエルに関する公式発表はありません。ただし、ドリュー・ゴダード監督は「新たな視点からマトリックス世界を描く」と語っており、これまでの物語とは異なる時代や登場人物を軸に据えた新展開が期待されています。
なお、かつてネオ役の候補だったウィル・スミスが、2025年に“意味深な投稿”を行ったことから、音楽・宣伝面での関与の可能性が一部メディアで取り沙汰されましたが、現時点で映画出演の予定は確認されていません。
このように『マトリックス』は、今後も進化を続けるフランチャイズとして、ファンのみならず映画業界全体が注目するシリーズであることは間違いありません。
まとめ|本作が投げかける問いと余韻
『マトリックス』は、単なるアクション映画にとどまらず、観る者に深い問いを投げかける作品です。「現実とは何か?」「自分は誰なのか?」「自由とは何を意味するのか?」といった哲学的なテーマが、仮想現実の世界を舞台に描かれています。
映画を観終えたあと、私たちは自分の置かれている社会や日常に目を向けざるを得なくなります。情報に囲まれ、無意識のうちに操作されているかもしれない現代――その中で、どれだけ自分の意志で生きているのか。本作が提示するのは、「気づくこと」「選ぶこと」「信じること」の大切さです。
ネオが選んだ「赤いカプセル」は、目をそらしたくなる現実を受け入れる覚悟の象徴でもあり、その選択の重みは観る者に静かに迫ってきます。観客はただの傍観者ではなく、自らの価値観を揺さぶられる“体験者”となるのです。
また、作品の余韻として残るのは、現実と虚構の境界だけでなく、信頼や愛、希望といった人間的な感情の本質です。冷たい世界の中にも、誰かを信じ、何かを信じ続けることの強さが描かれており、それが『マトリックス』を単なるテクノロジー映画ではない「魂の映画」たらしめている要素でもあります。
時を経ても色あせることのないその問いかけは、観る人の人生経験や価値観によって変化し、何度でも新しい発見を与えてくれます。『マトリックス』は、“観るたびに答えが変わる映画”として、これからも多くの人に問いを投げかけ続けるでしょう。
ネタバレ注意!本作の考察(開くと見れます)
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『マトリックス』の物語構造は、「救世主の誕生」という神話的プロットに加え、シミュレーション仮説や自己認識のメタファーとして読み解くことができます。ネオの旅は単なる戦いではなく、「目覚め」「啓示」「自己超越」のステップで構成された精神的な変容の物語でもあります。
特に印象的なのは、「選ばれし者(The One)」という概念の二重性です。オラクルはネオに対し、はじめは「あなたは選ばれていない」と語りますが、それはネオ自身が選ばれるのではなく、「自分を選ぶことができるか」が問われている伏線です。この問いかけは、自由意志と決定論という哲学的なテーマと密接に結びついています。
また、エージェント・スミスという存在も単なる敵役ではありません。彼はプログラムでありながら人間への嫌悪や自我を持ち始め、同時に「秩序」を象徴する存在でもあります。対するネオは「混沌」や「変化」を象徴し、この二項対立は旧社会と新社会、管理と自由といった対比を描いていると考えられます。
もう一つ注目すべきは、現実世界(ザイオン側)での人間の在り方です。電池として管理される存在という設定は、人間がシステムの中で自動化された「機能」に過ぎなくなっている現代社会への痛烈な風刺とも読めます。この構造に抗おうとする者=レジスタンスという構図は、観る者の中にある「従属と反抗」の葛藤を刺激します。
最後に、トリニティの「愛」がネオを覚醒させるという展開は、論理を超えた感情の力が仮想世界をも変える可能性を象徴しています。『マトリックス』のテーマがどれほどハードなSF哲学であっても、最終的に「人間らしさ」が世界を変えるというメッセージに帰結する点が、多くの人の心に残る理由かもしれません。
このように『マトリックス』は、一見するとシンプルな英雄譚のようでいて、その裏には幾重にも重なる意味と問いが隠されています。すべてを読み解くことは不可能かもしれませんが、観るたびに新たな気づきと視点を与えてくれる作品であることは間違いないでしょう。
ネタバレ注意!猫たちの会話(開くと見れます)
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